【2014南関東総体】京都精華女子が実践する「最新理論」と「笑顔」

カテゴリ:高校・ユース・その他

吉村憲文

2014年07月28日

練習ではリフティングを中心に最新理論を実践。

精華独特のリフティングメニューの練習風景。脳を刺激するトレーニングで学校の成績も向上しているという。

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 練習環境に関しては「ウチは週末の試合を除くと、週2回、学校から離れた場所にあるグラウンドで練習し、あとは学校の駐車場のコンクリートの上で行なう技術練習だけ。それも時間は、1時間半ほど」と越智監督は話す。
 
 トレーニングの多くはボールタッチに時間が割かれる。26種類あるというドリブル練習でまずはフィーリングを確認。ふと見ると、足下のボールが通常のサイズと違うことに気づく。
 
「サイズは3号球なんですが、重さは5号球と同じ不思議なボールなんです。これを蹴るとなぜか5号球のようにはボールが飛びません。明らかに重く感じるんです。でもうちの選手は試合直前までこのボールを触り続けています。でもこの扱いにくいボールで普段プレーしていると、5号球でのプレーが簡単だと感じるんです」(越智監督)
 
 しばらくして、練習は精華独特のリフティングメニューに移る。これもただのリフティングではない。ふたり組で向かい合い、一方が両手で数字を指し示す。例えば右手はリフティングの回数、左手はコントロールする足の部位という具合に。1ならインサイド、2はアウトサイド、3は腿。当然顔が上がっている状態でなければ相手の指示が見えない。
 
 そして突然「はい、ひねくれ」と越智監督の声。すると先ほどのルールが変更になり、1がアウトサイド、2は腿、3はインサイドに。とっさに判断を変えられるかどうか。実際にやってみると分かるのだが、頭と身体が同調しない。さらにリフティングをしながら手を身体の前後で叩き、さらに首を上下左右に振る動作も入れる。3つの動きを同時にこなさなくてはならず、当然混乱する。
 
 サッカーの世界では「リフティングができることは、必ずしもサッカーの実力とは関係ない」という「常識」がある。しかしその常識を打ち破るかのように、精華の練習はリフティングにこだわり、徹底して個人のスキルを磨き上げる。ただトレーニングだけを見ると個人技主体のサッカーのように思えるが、実際のゲームでは球離れが良くポゼッション率が高い。
 
 その理由について越智監督は「『ライフキネティック』という最新理論があって、ふたつ以上の動作を同時にこなすことで、脳を活性化させられるんです。ドイツ代表や、ドルトムントのクロップ監督が取り入れていることでも知られています。世界のサッカーは脳でプレーする時代がすぐそこに来ていて、それをリフティングを中心に精華流にやっているんです。学校の成績も彼女たちは優秀ですよ。レギュラー全員が5段階評価で4.0以上あります」と説明する。
 
 谷口木乃実キャプテンも「高校に入り、この練習をやってメッチャ成績が上がりました」と話す。
 
 彼女たちの頭の良さは、サッカーにもそのまま反映されており、判断の早さは高校女子サッカーの中でもトップレベルにあると言える。
 
「リフティングの練習をしているようで、実は脳を刺激する。それによって脳の演算処理能力が上がり、一目見ただけでピッチ上で起きていることを理解し、対応するスピードが上がる」(越智監督)
 
 さらにこの手法には、精華の雰囲気がマッチしている。
「ライフキネティックは、失敗して笑うことが重要だと言われています。笑いが脳を刺激するそうです。だから普段の練習の中でも、失敗させ、笑顔にさせる仕掛けをしています。練習中に笑顔を見せると、『真剣にやってるのか!』と怒鳴る指導者がいますが、ここでは笑顔が当たり前。僕はいつも彼女たちをいかに笑わせるかばかりを考えてます」(越智監
督)
 
 ただし「越智さんがウチらを笑わして、手の上で遊ばせているように見えて、実はウチらが遊んであげてるだけやねん(笑)」(園田瑞貴)と今どきの女子高生はかなりしたたか。言うなれば、この空気感、選手と監督の距離感こそが精華流と言える。
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