「感謝を忘れたら俺は終わり」。その背景には“師匠”の言葉が。
FC東京では不動のレギュラーとして活躍し、昨季のJリーグではベストイレブンに初めて選ばれた。そして日本代表として2015年1月のアジアカップに参戦し、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督の初陣にも招集されるなど、宏介は日本を代表する左SBに成長を遂げた。
金銭的にも裕福になったが、天狗になっている様子は微塵もない。兄の大哉は、三浦淳寛から贈られた言葉が弟のキャリアに大きな影響を与えたという。
「横浜FCを離れる時に、『自信と過信は紙一重』とアツさんに言われたそうです。弟はその言葉をとても大事にしていて、私とも『過信しないようにしよう』と常に確かめ合っています」
どんなに有名になっても、初心を忘れない。だから宏介は、試合の後、ファン・サポーターに向かって誰よりも深くお辞儀をする。
「弟にこう言ったことがあります。『ファンあっての仕事、周りにいる方あってのサッカー人生なんだから、どんな時でも感謝の気持ちをみんなに示せ』と」(大哉)
文字通り父親としてアドバイスしてくれた兄の想いを、宏介はしっかりと理解し、受け止めている。
「俺の人生に携わってくれた方への感謝の気持ちは忘れていません。行動でも示しているつもりです。それがなくなったら、俺は終わりです。だから、満足することなく常に上を目指す。夢を与えられるプレーヤーになりたいです」
宏介は人気プロサッカー選手、そして大哉はブランド品売買などをする株式会社『ダイヤコーポレーション』の代表取締役。「母親に楽をさせたい」と誓い合った息子たちが荒波に揉まれながらも頼もしく成長してくれて、母・祐子は「もう十分に幸せです」と頬を緩める。それでも宏介は、母親に「まだまだでしょ。満足してんじゃねーよ」と発破を掛けるのだ。
「兄とも互いに言っています。『もっと頑張ろう』って。母親孝行にゴールはないですから」
兄・大哉も追随する。
「母親孝行ができているかどうかを決めるのは、私でも宏介でもありません。母親が決めることです。だから、これからもふたりで母親を支えていく。ひと通りやったから終わりではなく、やり続けることにこそ意味があるのです」
熱い想いを口にする息子たちを余所に、母・祐子は意外にものほほんとしている。
「テレビ番組とかでよく宏介が『うちは貧乏だった』と言っているのですが、それを観ると『嘘つけ、どこが貧乏だったのよ。あのアパート時代だけ、短い期間だったじゃない』って反論したくなるんですよ(笑)。
どうも男の子は母親が苦労しているように見えるんでしょうね。自分を犠牲にして育ててくれた存在と、大哉も宏介もそう思ってくれているのかもしれません。だから今は、『そういうことにしておこうかな』と。最近は『そんな苦労してないよ』と否定しないで、なにも言わずに笑って済ませています(笑)」
母親が明るくなってくれたことがなにより嬉しいという宏介は、年が明けると寒川神社に兄と一緒に初詣に行く。
絵馬に“飛躍し続ける”という文字を書くために──。
その文字にはこんな想いが込められている。現状維持は衰退と同じ、決して満足せず常に上を見る。それは宏介にとって生涯揺らぐことのない、永遠のテーマなのである。<文中敬称略>
取材・文:白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集部)
金銭的にも裕福になったが、天狗になっている様子は微塵もない。兄の大哉は、三浦淳寛から贈られた言葉が弟のキャリアに大きな影響を与えたという。
「横浜FCを離れる時に、『自信と過信は紙一重』とアツさんに言われたそうです。弟はその言葉をとても大事にしていて、私とも『過信しないようにしよう』と常に確かめ合っています」
どんなに有名になっても、初心を忘れない。だから宏介は、試合の後、ファン・サポーターに向かって誰よりも深くお辞儀をする。
「弟にこう言ったことがあります。『ファンあっての仕事、周りにいる方あってのサッカー人生なんだから、どんな時でも感謝の気持ちをみんなに示せ』と」(大哉)
文字通り父親としてアドバイスしてくれた兄の想いを、宏介はしっかりと理解し、受け止めている。
「俺の人生に携わってくれた方への感謝の気持ちは忘れていません。行動でも示しているつもりです。それがなくなったら、俺は終わりです。だから、満足することなく常に上を目指す。夢を与えられるプレーヤーになりたいです」
宏介は人気プロサッカー選手、そして大哉はブランド品売買などをする株式会社『ダイヤコーポレーション』の代表取締役。「母親に楽をさせたい」と誓い合った息子たちが荒波に揉まれながらも頼もしく成長してくれて、母・祐子は「もう十分に幸せです」と頬を緩める。それでも宏介は、母親に「まだまだでしょ。満足してんじゃねーよ」と発破を掛けるのだ。
「兄とも互いに言っています。『もっと頑張ろう』って。母親孝行にゴールはないですから」
兄・大哉も追随する。
「母親孝行ができているかどうかを決めるのは、私でも宏介でもありません。母親が決めることです。だから、これからもふたりで母親を支えていく。ひと通りやったから終わりではなく、やり続けることにこそ意味があるのです」
熱い想いを口にする息子たちを余所に、母・祐子は意外にものほほんとしている。
「テレビ番組とかでよく宏介が『うちは貧乏だった』と言っているのですが、それを観ると『嘘つけ、どこが貧乏だったのよ。あのアパート時代だけ、短い期間だったじゃない』って反論したくなるんですよ(笑)。
どうも男の子は母親が苦労しているように見えるんでしょうね。自分を犠牲にして育ててくれた存在と、大哉も宏介もそう思ってくれているのかもしれません。だから今は、『そういうことにしておこうかな』と。最近は『そんな苦労してないよ』と否定しないで、なにも言わずに笑って済ませています(笑)」
母親が明るくなってくれたことがなにより嬉しいという宏介は、年が明けると寒川神社に兄と一緒に初詣に行く。
絵馬に“飛躍し続ける”という文字を書くために──。
その文字にはこんな想いが込められている。現状維持は衰退と同じ、決して満足せず常に上を見る。それは宏介にとって生涯揺らぐことのない、永遠のテーマなのである。<文中敬称略>
取材・文:白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集部)