【黄金世代・復刻版】1999 U-20日本代表メモリアル「最強の名のもとに」後編

カテゴリ:日本代表

川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)

2017年04月26日

なにが足りないのか、を噛みしめながら…。

決勝で韓国に敗れ、アジアの頂点には届かず。ライバルは日本がまだ備えていない集中力、精神力を携えてた。(C)SOCCER DIGEST

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【週刊サッカーダイジェスト 1999年5月19日号にて掲載。以下、加筆・修正】

 タイ北部に位置する町、チェンマイ。10月とはいえ湿気を含んだ酷暑は容赦ない。アジアユースは厳しい条件下で開催された。
 
 上位4チームに入れば、ワールドユースの出場権を得られる。だが日本の目標は、もちろん初のアジア王者になることだった。
 
「ここまで来たら、もう戦術うんぬんじゃないでしょう。メンタルで負けないように。それがすべてなんじゃないでしょうか」
 
 開幕前、意欲を燃やしていた酒井だったが、なんと清雲監督は不動のボランチを先発から外してしまう。さらには負傷明けで、試合勘が戻っていない金古聖司をもベンチに座らせる。右SBに加地、そして守備の中央には市川を配置した。
 
「悩んだが、ベストな布陣だと思って決断した。あとは彼らの順応性に期待した」(清雲監督)
 
 だが、即興システムに順応できるほど、彼らは逞しくなかった。混乱を極める最終ライン。中国にあっさり先制されると、監督はなんと加地に代えて金古を投入した。

 結果的に日本は2-2で凌ぎ敗戦を免れたが、初戦でのドタバタぶりは、大会の最後まで継続されることとなった。
 
 もともと個々の能力で群を抜いていた日本には、深い戦術理解などなくても、グループリーグを突破できる実力があった。守備ラインは絶えず単調なロングボールに苦しみ続け、攻撃は本山と小野のセンスに依存している。そんなダマしダマしの連戦でも、きっちりと白星を重ねていった。

 第4戦の韓国戦を前にワールドユース出場が確定。清雲監督に背を向け続ける幼き日本代表は、とりあえず最低限の目標は達成した。
 
 迎えた日韓戦。日本を熟知する韓国の若武者たちは、非情なまでに弱点を突いてきた。フィジカル面の優位性を存分に活用し、5人のマン・マーカーを配備。攻撃は徹底して裏を突くカウンター。スコアは1-2と僅差の黒星ながら、
 
「対処しきれなかった。こんなに悔しい負けは久しぶりです」
 
 という小野の言葉が、日本の完敗ぶりを物語る。
 
 準決勝のサウジアラビア戦で圧勝し、決勝で再度、韓国と顔を合わせた日本だったが、試合展開はほとんど変わらなかった。先制され、追いつき、突き放される。日頃は指揮官になんら疑問さえ投げかけないわりに、打開する術だけはベンチに求める選手たち。終了間際、清雲監督はDF鶴見智美を投入し、最前線に配備する。パワープレーなど練習で一度も試したことがなく、鶴見のFW起用も初めて。誰もが驚くギャンブルに出たのだ。

 小野や稲本が、懸命に撤回を要求しても、ときすでに遅し。アジア制覇という夢が、露と消える瞬間だった。
 
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