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【安永聡太郎】リーガ制覇も狙える! 注目の“ダークホース”セビージャの「補強」と「戦術」の特長を深掘り

カテゴリ:連載・コラム

木之下潤

2020年12月19日

優勝に向けた唯一の懸念材料は?

モンチSD(右)が招聘したロペテギ監督がチームをまとめている。(C) Getty Images

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 唯一の懸念材料は左サイドバックのレギロンが抜けた穴だ。

 現代サッカーにおいてサイドバックは幅をとったり、内側を使ったり、ゲームメイクをしたり、大きな役割を担うから。スパーズに移籍してしまったレギロンがいなくなった穴を感じる。左利きのカリム・レキクという選手ではなく、アクーニャを使っていたけど、ケガで離脱。最近はビダルを起用しているけど、右利きの選手を左サイドにあてがわなければいけない状態だ。

 これまでのチームの戦い方を考えると、左サイドで左利きの選手がオープンにボールを持ち、斜めにボールを供給できたほうがいい。特に12月5日のマドリー戦(0-1)は左サイドからの攻撃が停滞してしまって、ボールがうまく回らず、右サイドからの攻撃が多くなった。

 この試合は非常に重たいゲームだったし、CL5戦目にチェルシーにも0-4で大負けてしまった。2チームともターンオーバー制を導入していたけど、ここまでの差が開くとは思わなかった。アクーニャのケガ次第だけど、ここは対処しないといけないのかな。

 特にセビージャもポジショナルプレーとして「ウイングをどう生かしますか」、「サイドバックとのコンビでサイドをどう崩しますか」、「中央にいるエン=ネシリやデヨングというターゲットマンにどうボールを預けますか」という点が勝敗のカギを握る。でも、現状は左サイドが機能していないというか、プラスを生み出すには弱く感じる。

 それでも今のマドリーにはホームだったし、勝ってほしかった。期待するほど、いい決定機を作ることなく、オウンゴールでやられて星を落としてしまった。その原因となったのは左サイドだったと思う。左サイドの不具合が大きく響いた。
 
 サイドアタックを深い位置でどう行なうか。

 そのために、サイドバックを高い位置に取らせ、2CBが広がってピボのフェルナンドが下がってゲームを作る。インテリオール(インサイドハーフ)が右にジョルダンと左にラキティッチを置いた「サリーダ・デ・バロン」を基本としたときは、中央にラキティッチが入ってきてひし形を作りながら試合を構築していく。もちろんジョルダンが中央の位置に入ることもある。

 大きな役割としてはラキティッチがゲームコントロール、ジョルダンがバランスコントロールみたいなところで、両サイドを高い位置にキープさせる。

 右サイドのコンビは昨シーズンに築いた関係を生かしながら比較的に自由にプレーし、左サイドはウイングの選手がサイドに張って後方のサイドバックが内側をとる。これが昨シーズンまでの基本的な戦い方。今シーズン、この左サイドはレギロンの穴埋めができず、戸惑ったところがあって構築中といった感じだ。

 だから、今シーズンは目をつぶっても「こうやったらこうですよね」といった再現性の部分で言うと昨シーズンよりは減った。それは選手の入れ替わりがあるから仕方がない。得点力は減っているし、ギリギリ勝っている試合が増えているのは間違いないので、モンチとロペテギの腕の見せどころだ。

 整理すると、セビージャは自陣も含め相手陣内の3分の2エリアに入ったところで「チームとしてどうするのか」が明確だから、基本的には選手もプレーがしやすいと思う。

 1対1で仕掛けない。
 背後にランニングしない。

 これは選択肢として絶対ありえない。なぜならセビージャはこの状況を作るためにゲームをセットアップしているから。仮のこのエリアでボールを失おうが、ゴールキックになろうが、深い位置だからロングカウンタ―でやられることは少ない。

 どちらかといえば、何度もボールを戻しながらゲームメイクをやり直すのではなく、セットアップしてダメならサイドチェンジを繰り返し、そこでいい状態ができればサイドアタックを仕掛けることがチームとしてやるサッカーだ。

 当たり前のように仕掛ける。
 当たり前のように背後を突く。
 当たり前のようにクロスを上げる。

 ここが明確だから選手が入れ替わったとしてもある程度はチームが安定している。もともとセビージャはウイングで戦うチーム。そこが明確だからモンチが連れてくる選手も活躍できる。チームに溶け込むときに新しいプレーを覚えることを要求されるのではなく、これまでやってきたことを出せばいい状態だから。評価されたものをそのまま出せばいい。もちろんピッチ上の相互理解の構築には時間がかかる。

 CLでの上位進出やリーガのトップ3を倒すには、セビージャの課題は左サイドになってくる。シーズンを通して戦う中で1月後半から2月くらいで固まってくればコンスタントに勝ち点をとれるし、上位チームとも良い戦ができるんじゃないかな。

 このまま上位の混戦状態が続けば、今シーズンに限っては優勝も狙える可能性はある。

分析●安永聡太郎
取材・文●木之下潤
※取材は12月7日に行っています

【分析者プロフィール】
安永聡太郎(やすなが・そうたろう)
1976年生まれ。山口県出身。清水商業高校(現・静岡市立清水桜が丘高校)で全国高校サッカー選手権大会など6度の日本一を経験し、FIFAワールドユース(現U-20W杯)にも出場。高校卒業後、横浜マリノス(現・横浜F・マリノス)に加入し、1年目から主力として活躍して優勝に貢献。その後はスペインのレリダ、清水エスパルス、横浜F・マリノス、スペインのラシン・デ・フェロール、横浜F・マリノス、柏レイソルでプレーする。2016年シーズン途中からJ3のSC相模原の監督に就任。現在はサッカー解説者として様々なメディアで活躍中。
 
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