東福岡伝説の3冠…あの雪の決勝で、勝負師・志波芳則は一世一代の賭けに出た(後編)

カテゴリ:高校・ユース・その他

川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)

2017年12月28日

涙はね、ちょろっとな。人前で泣いたのはあの一度きり

大会を通じて格の違いを見せつけた本山。雪のピッチでもお構いなしに、随所で圧巻の技巧を披露した。(C)SOCCER DIGEST

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 試合は前半21分、帝京に先制される展開。中田のロングボールにGK玉浦寛敏が飛び出し、金杉との競り合いに敗れて被弾した。だがその3分後に東福岡は古賀大のシュートが雪のためゴール前で止まり、それを榎下が詰めてすぐさま同点に追いつく。
 
 そして後半開始5分、珍しく前半途中からピッチに投入されていた青柳が大仕事をやってのける。ボールキープする本山が出したパスに抜け出し、鮮やかに逆転弾を蹴り込んだのだ。指揮官は「あれは本山が巧かった。青柳が走って来るのが見えていて、抜群のタイミングでちょこんと出した。あの雪のなかであんなに綺麗なゴールを奪えるんだから、大したものですよ」と称えた。
 
 準々決勝で負傷した中盤の軸、貞富信宏を送り込むなど、帝京の人海戦術に揺さぶられながら、その後も東福岡の堅牢は揺るがなかった。スコアは2-1のまま動かず、やがて歓喜の瞬間を迎えた。高校サッカーの歴史に燦然と輝く、トリプルクラウン達成である。
 
 涙は見せたのか? 意地悪な質問をぶつけてみると、20年越しの事実が判明した。スタンド観戦していた寺西忠成さんがピッチレベルに降りてきて、熱い抱擁を交わした瞬間、思いがけず涙がこぼれたという。寺西さんはかつて強豪・八幡製鉄サッカー部で監督を務め、晩年はヒガシの非常勤コーチを買って出てくれていた。志波先生が師とも仰いだ人物だ。
 
「涙はね、ちょろっとな。寺西さんと抱き合ったときはさすがに堪え切れんかった。ずっと力になってくれた方ですから。人前で泣いたのはあの一度きりだけど、ベンチの裏のほうだったから、ほとんど誰にも気づかれとらんかったよ(笑)」
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