「サプライズ」の舞台裏――大久保嘉人はなぜ再生したのか

カテゴリ:日本代表

2014年05月12日

選ばれなかった選手の分まで「やる責任がある」。

川崎で大久保と好連係を見せる中村は選ばれず。チームメイトの分まで戦うと意気込む。 (C) SOCCER DIGEST

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 キャリアの大半の時期を「暴れん坊」と言われてプレーしてきた大久保だが、昨シーズンに受けたカードは3枚のみ。プロとしてのキャリアの中で、初めて退場も累積警告による出場停止もないシーズンを送った。
 
 今シーズンも、大久保が受けた警告は明らかな誤審による1回にとどまっており、精神的な成長は明らかだ。心身ともにレベルアップした大久保が、ベテランとしての経験とコンスタントにゴールを積み重ねてきたその活躍を買われ、代表入りしたのは当然の結果とも言える。

 適切な出場の機会さえ与えられれば、大久保は十分にその力量を発揮してくれるはず。ただ、惜しむらくは、大久保の良さを引き出す中村憲剛が、メンバーから漏れてしまったこと。
 
 13節の鹿島戦で見せたように、大久保は厳しいパスでもコントロールする高い技術を持ち、大久保の癖を知り尽くした中村とともに選出されていれば、確実に代表の攻撃のリズムを変化させられるコンビだっただけになんとも残念だ。
 選出後、ソウルへの移動直前に羽田空港で開いた会見で、大久保は「今、感謝したい人は?」との問いに対し、真っ先に「(川崎の)チームメイト」と答え、「フロンターレに来て、周りの選手がいなかったら活躍できなかったと思います」と、その理由を述べている。
 
 そのチームメイトの筆頭として、きっと脳裏に浮かんでいたのは選外となった中村だろう。ブラジル行きを切望していた中村の無念を胸に刻み、大久保は語った。
 
「国を代表していく。代表に選ばれていなくても、力を持っている人もいる。その人たちの分もやる責任がある」
 
 2年3か月ぶりの復帰となった、「サプライズ招集」。ブラジルでの大久保の活躍を期待したい。
 
取材・文:江藤高志(フリーライター)
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