「サプライズ」の舞台裏――大久保嘉人はなぜ再生したのか

カテゴリ:日本代表

2014年05月12日

敵が嫌がる場所を見つけるセンス。

2013年に移籍した川崎で再ブレイク。風間監督の下で本来の輝きを取り戻し、得点力に磨きがかかった。(C) SOCCER DIGEST

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 そんな大久保に転機が訪れたのは、神戸がJ2に降格した2012年だ。シーズン後にクラブと話し合いを持った大久保は、チームから必要とされていないと感じ、移籍を決意。新天地として川崎を選んだのだった。「関東に行くくらいなら海外に行く」とうそぶくほどの関東嫌い。しかし、この川崎への移籍が彼を変えることになる。
 
 川崎に移籍直後の13年2月10日の練習後、大久保について問われた風間監督は「前での動きがすごく上手い。タイミングも分かるようになった。我々がストライカーに期待しているものも整理できているのかなと思う」と述べ、そのポテンシャルと吸収力の速さに舌を巻いた。
 川崎では加入当初こそサイドハーフを任されていたが、13年の開幕戦の柏戦、2節の大分戦の試合中に中央にポジションを変更。その意図を問われた風間監督は、「シュートもできる。ドリブル突破もできる。それからパスもできる。だから嘉人がたくさん前で触ったほうが面白い。そういう意味では(中村)憲剛と同様に、ボールをたくさん触ってほしい」と説明している。この頃から、風間監督は大久保を中央で使う有効性を認識していたわけだ。
 
 今でこそCFのポジションが大久保の定位置となっているが、上背のない大久保をそのポジションで起用する「非常識さ」は、風間監督ならではの発想だろう。指揮官は、味方に対し常に顔を出し、相手の逆を取り、足下に速いパスを付けて行くことでブロックを崩せるのだと教えてきた。
 
 そうした点で、高い技術と戦術眼を持ち合わせる大久保のサッカーセンスがあれば、上背のなさはハンデとはならなかったのである。大久保は川崎に加入以来、自由を与えられて思う存分に能力を発揮しているように見える。その点を風間監督はこう語っている。
 
「選手が『自由に』動けているということは、自分たちの特徴がスムーズに出ている状態。それからもうひとつは、敵にとって嫌なプレーができているということ。自分が自由に動いても、敵が嫌じゃなければ、それは自由じゃない。嘉人はそこが分かっている」
 
 相手が嫌がる場所を見つける大久保のサッカーセンスの良さは、複数のチームメイトも証言しており、彼がそうした能力を持つのは間違いない。多くの戦術的タスクの実行を求められていたという神戸とは違い、風間監督は大久保に好きなこと、すなわち相手が嫌がるプレーで、川崎を勝利に導くことをさせている。
 
 そして、プレッシャーの大きい中央でも臆することなくボールを引き出せる大久保は、チームの攻撃を織りなす重要な選手となるのである。
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