【黄金世代】第4回・稲本潤一「アーセナルでなにを迷い、なにを決断したのか」(♯4)

カテゴリ:特集

川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)

2017年09月05日

海外でやれる環境があるのに、それを捨てる選択肢はなかった。

欧州での9年半は、ひょっとしたら苦い思い出のほうが多いかもしれない。それでも稲本は「本当に充実していた」と言い切る。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

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 ガラタサライは伝統と格式のある素晴らしいビッグクラブだったという。だが、トルコの国民性なのかお家芸なのか、給料未払いの悪習は容赦なく稲本をも襲った。「面白い1年間やったけど、あれはマイった。FIFAに間に入ってもらってなんとかなりましたけどね」と、苦笑いを浮かべる。
 
 その後はフランクフルトで2年、レンヌで半年を過ごした(フレデリック・アントネッティ監督との再会を果たした)。「そこまでいろんな国を旅するタイプだとは思わなかったけど?」と投げかけると、「そう、そうなんよね」と頷き、こう答えた。
 
「レンタルのカーディフを入れると、ヨーロッパでは全部で7チーム。なんというか、移籍に対する考えが柔軟になっていったかな。イングランドを飛び出してガラタサライに行ったくらいから、まるで苦じゃなくなった。サッカーしてたら自然と選手とは仲良くなるし、ゲレツさんは英語を話してくれて、トルコのひとらも親切やったんでね」
 
 日本に帰る選択肢はなかったのか。その問いかけに対しては、きっぱりこう答えた。
 
「自分を必要としてくれるクラブがあるうちは、ヨーロッパにいたかった。いっかい帰ってしまうと、自分の性格的にもういっかい出るのは厳しいと思ってたから。日本やとなんでも揃ってますからね。海外でやれる環境があるのに、それを捨てる選択肢はなかった」
 
 そして2010年春、稲本は川崎フロンターレへの完全移籍を果たす。この時、30歳。アーセナルへ旅立ったあの日から、およそ9年の歳月が流れていた。
 
<♯5に続く>
 
取材・文:川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)
 
※9月11日掲載予定の次回は、眩い輝きを放った2002年日韓ワールドカップをはじめ、日本代表での華麗なる日々を振り返ります。ご期待ください!
 
【稲本潤一PHOTO】語り継がれるべきキャリアを厳選フォトで 1995-2017
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PROFILE
いなもと・じゅんいち/1979年9月18日生まれ、大阪府堺市出身。自宅近くの青英学園SCで5歳から本格的にサッカーを始め、小6までFWや攻撃的MFでプレー。地域選抜に選ばれるなど頭角を現わし、G大阪の誘いを受けて、ジュニアユースチームの第1期生となる。やがてボランチにコンバートされて才能が一気に開花。クラブユース界の横綱として全国にその名を轟かせ、高3でJデビューを飾るなど時代の寵児となる。2001年から活躍の場をプレミアリーグに移すと、アーセナル、フルアム、WBA(半年間はカーディフにレンタル移籍)でプレーし、その後はトルコ、ドイツ、フランスを渡り歩いた。2010年に川崎へ移籍し、日本に帰還。現在、札幌で3シーズン目を戦っている。世代別代表ではエリート街道を突き進んだ。U-17世界選手権、ワールドユース、シドニー五輪と3つの世界大会すべてにエントリーし、2000年2月には21歳でA代表に初招集。02年、06年、10年と3度のワールドカップを戦った。日本代表通算/82試合出場・5得点。Jリーグ通算/256試合・20得点(J1は217試合・19得点)。181㌢・77㌔。O型。データはすべて2017年9月4日現在。

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