【黄金世代】第4回・稲本潤一「アーセナルでなにを迷い、なにを決断したのか」(♯4)

カテゴリ:特集

川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)

2017年09月05日

パスは速くて強くて、正確。球回しなんて経験したことがないレベルで。

アーセナルでは公式戦2試合の出場に終わった。しかもこのリーグカップ、ブラックバーン戦で痛恨のミスを犯してしまう。(C)Getty Images

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 ティエリ・アンリ、デニス・ベルカンプ、ロベール・ピレス、パトリック・ヴィエラ、フレデリック・リュングベリなど、2001-2002シーズンのガンナーズ(アーセナルの愛称)には錚々たるワールドクラスが集結していた。トレーニングからして異次元の領域だったという。
 
「あまりにもレベルが違いすぎた。球回しなんて経験したことがないレベルで、パスは速くて強くて、正確。まったく獲られへん。チームでレギュラーを狙うという感覚にはなれなかった。仲が良かったのは、ブラジル人のエドゥとかコロ・トゥーレ。ベンチメンバー同士でよく一緒にいましたね」
 
 チャンスがゼロだったわけではない。ワーシントンカップ(リーグカップ)では2試合の出場機会を得た。だがそのパフォ―マンスが、散々なものだったのだ。
 
「ヴェンゲルには、体重管理だけはしっかりやっておけと言われてました。体重が増え始めたりしてたんで。でもリーグカップでねぇ……。プレミアのチームと対戦した時に、中盤のセンターで出たんですけど、僕がボールをかっさらわれて、そこから失点。次の瞬間には(ポジションを)サイドに回されて、前半で替えられてしまった。あれは落ち込みましたね、久しぶりに。ホンマに」
 
 アーセナルはそのシーズン、プレミアリーグとFAカップのダブル(2冠)を達成する。旧ホームスタジアムのハイバリーで、恥ずかしそうに優勝トロフィーを掲げる稲本。複雑な心境だったはずだ。
 
「みんな俺のこと知ってんのかなって思ってた。それくらい場違いな感じですよね。優勝パレードにも参加したし、いま思うとすごく貴重な経験はしたんですけど、当時は正直、はよ終わってほしいと思ってました」
 
 試合勘やコンディションを不安視されたものの、失意のシーズンを終えたあと、稲本は2002年日韓ワールドカップで躍動する。ベルギー戦とロシア戦でゴールを決め、たちまち“時のひと”となるのだ。
 
 そして彼は、1年でアーセナルを去った。新天地は西ロンドンのフルアム。プレミアリーグでの挑戦を続けたのは、稲本なりの意地もあっただろう。
 
「ワールドカップの勢いのまま行ってるから、最初から波に乗ってましたね。プレミアの舞台に絶対立ちたいと思ってたし、1年我慢してたものを思いきりぶつけられた。(ジャン)ティガナ監督が好んでたのは、中盤がダイヤモンド型の4-4-2。で、僕はトップ下。カップ戦(UEFAインタートトカップ)でハットトリックしたりとシーズン前半は調子も良かったんですけど、点が取れなくなると試合にも出れんようになったりで。自分のプレースタイルに迷ってる時期でしたね」
 
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