FIFA移籍規定17条を行使すればイグアインの移籍金は…。
ナポリはイグアインとの契約に9400万ユーロ(約132億円)という高額の違約金を設定している。これはどのクラブにとってもおいそれと支払える額ではない。その意味では、イグアインが自分の意思でナポリを出るのは簡単ではないように思える。
だが、注意すべき点は、FIFAの移籍規定17条(契約から3年、満28歳以上の選手は、FIFA調停委員会が定める違約金を支払うことによって一方的に契約を破棄できる)だ。イグアインはこの夏、これを行使する権利を得る。
イグアインがクラブと対立してまで我を通すとは思えないが、現在の年俸(550万ユーロ=約7億7000万円)を大きく上回るオファーが舞い込めば、なにが起こるか分からない。
実際に彼の兄弟(兄のニコラス・イグアインが代理人)や弁護士など周辺の人びとが、17条を行使した場合の違約金はどのくらいの水準になるかをFIFAに問い合わせているという情報が、私のもとに入ってきている。
例えば、仮に違約金が3500万ユーロ(約49億円)と算出されたとしよう。この数字を手にしたイグアイン側がナポリに対して、チェルシーやマンチェスター・U、バイエルンなどからのオファーを引き出した上で、「もし17条を行使したら3500万ユーロで移籍ができる。しかし、そうはしたくない。違約金の9400万ユーロでは高過ぎるから、6000万ユーロ(約84億円)で手を打とうじゃないか」と持ちかけるのは、十分にあり得るシナリオだ。
もちろんすべてはまだ可能性の域を出ない話だし、ナポリの立場も今シーズンの結末によって大きく変わってくるだろう。もしスクデット(セリエA優勝)を勝ち取り、来シーズンのチャンピオンズ・リーグ出場権を得れば、イグアイン自身が「もう1年はナポリで」と決断するかもしれない。
しかし、ナポリがもし今後大きく崩れてCLプレーオフ(セリエA3位)やヨーロッパリーグ(セリエA4~5位)に回りでもすれば、状況は違ってくる。ナポリは6000万ユーロ級のオファーを受け入れざるを得なくなるかもしれない。
文:ジャンルカ・ディ・マルツィオ
翻訳:片野道郎
※『ワールドサッカーダイジェスト』2016.03.03号より加筆・修正。
【著者プロフィール】
Gianluca DI MARZIO(ジャンルカ・ディ・マルツィオ)/1974年3月28日、ナポリ近郊の町に生まれる。パドバ大学在学中の94年に地元のTV局でキャリアをスタートし、2004年から『スカイ・イタリア』に所属する。元プロ監督で現コメンテーターの父ジャンニを通して得た人脈を活かして幅広いネットワークを築き、移籍マーケットの専門記者という独自のフィールドを開拓。この分野ではイタリアの第一人者で、2013年1月にグアルディオラのバイエルン入りをスクープしてからは、他の欧州諸国でも注目を集めている。
だが、注意すべき点は、FIFAの移籍規定17条(契約から3年、満28歳以上の選手は、FIFA調停委員会が定める違約金を支払うことによって一方的に契約を破棄できる)だ。イグアインはこの夏、これを行使する権利を得る。
イグアインがクラブと対立してまで我を通すとは思えないが、現在の年俸(550万ユーロ=約7億7000万円)を大きく上回るオファーが舞い込めば、なにが起こるか分からない。
実際に彼の兄弟(兄のニコラス・イグアインが代理人)や弁護士など周辺の人びとが、17条を行使した場合の違約金はどのくらいの水準になるかをFIFAに問い合わせているという情報が、私のもとに入ってきている。
例えば、仮に違約金が3500万ユーロ(約49億円)と算出されたとしよう。この数字を手にしたイグアイン側がナポリに対して、チェルシーやマンチェスター・U、バイエルンなどからのオファーを引き出した上で、「もし17条を行使したら3500万ユーロで移籍ができる。しかし、そうはしたくない。違約金の9400万ユーロでは高過ぎるから、6000万ユーロ(約84億円)で手を打とうじゃないか」と持ちかけるのは、十分にあり得るシナリオだ。
もちろんすべてはまだ可能性の域を出ない話だし、ナポリの立場も今シーズンの結末によって大きく変わってくるだろう。もしスクデット(セリエA優勝)を勝ち取り、来シーズンのチャンピオンズ・リーグ出場権を得れば、イグアイン自身が「もう1年はナポリで」と決断するかもしれない。
しかし、ナポリがもし今後大きく崩れてCLプレーオフ(セリエA3位)やヨーロッパリーグ(セリエA4~5位)に回りでもすれば、状況は違ってくる。ナポリは6000万ユーロ級のオファーを受け入れざるを得なくなるかもしれない。
文:ジャンルカ・ディ・マルツィオ
翻訳:片野道郎
※『ワールドサッカーダイジェスト』2016.03.03号より加筆・修正。
【著者プロフィール】
Gianluca DI MARZIO(ジャンルカ・ディ・マルツィオ)/1974年3月28日、ナポリ近郊の町に生まれる。パドバ大学在学中の94年に地元のTV局でキャリアをスタートし、2004年から『スカイ・イタリア』に所属する。元プロ監督で現コメンテーターの父ジャンニを通して得た人脈を活かして幅広いネットワークを築き、移籍マーケットの専門記者という独自のフィールドを開拓。この分野ではイタリアの第一人者で、2013年1月にグアルディオラのバイエルン入りをスクープしてからは、他の欧州諸国でも注目を集めている。