思い出したサッカーの楽しさを胸に現役を終える。
練習も試合も「仕事だ」という割り切った形でプレーしていた。月日が流れ、季節が変わっても、サッカーへの情熱の井戸は空っぽのままだったという。
「そういう僕の姿はきっとサポーターには見透かされていたと思う」
2011年夏で契約が満了するため、浦和は延長オファーを提示。鈴木は半年間だけ延長に応じる2011年シーズンで現役引退を決意した。
その2011年シーズンは、キャプテンとして残留争いを戦った。大きなものを背負い、ぎりぎりの戦いのなかで残留を決められたこと。鈴木の井戸に情熱が溜まり始めたのかもしれない。そのうえ、広島時代から、好印象を持っていたミハイロ・ペトロヴィッチの監督就任も後押しとなり、現役引退を翻意することになった。
「君たちの背負っているプレッシャーを降ろしてください」
ペトロヴィッチ監督の言葉に心が震えた。大きなため息をつくように、長年溜めこんだ不必要な想いを吐き出せた。
「ずっと忘れていたサッカーを楽しむことを教えてくれた恩人。まだまだ僕もサッカーが上達するんじゃないかとワクワクしている」と鈴木はペトロヴィッチ監督について話している。
プロになりたいと無我夢中で走り続けた少年時代。プロとしてあるべき姿を追求し続けた成長期。勝負のなかにある“楽しさ”を追い求め、夢へ向かう階段を登り続けた20代。しかし、人生を楽しんではいなかったと気づいた20代後半。そして今、ボールを蹴るだけで、これほど楽しいのかと子どもの頃を思い出す。
「夢や目標を手にするには、誰にも負けないだけの努力が必要です。でも、努力しても欲しいものが手に入らないのも現実。それでも諦めない人を尊敬するし、そういう人を応援したい。と同時に、ひとつの夢が潰えても、また新しい夢が浮かんでくる」
アテネ五輪メンバー落ちをはじめ、鈴木が現役時代に味わった挫折や苦悩は数限りない。しかし彼は、その悔しさをバネにして、奮闘してきたわけではないのかもしれない。それほど人生は単純でもないし、悔しさから解放されてこそ、新しいドアが見つかるのかもしれない。
鈴木啓太。その人生はまだまだ「終わりなき旅」なのだろうから。
取材・文:寺野典子(フリーライター)
「そういう僕の姿はきっとサポーターには見透かされていたと思う」
2011年夏で契約が満了するため、浦和は延長オファーを提示。鈴木は半年間だけ延長に応じる2011年シーズンで現役引退を決意した。
その2011年シーズンは、キャプテンとして残留争いを戦った。大きなものを背負い、ぎりぎりの戦いのなかで残留を決められたこと。鈴木の井戸に情熱が溜まり始めたのかもしれない。そのうえ、広島時代から、好印象を持っていたミハイロ・ペトロヴィッチの監督就任も後押しとなり、現役引退を翻意することになった。
「君たちの背負っているプレッシャーを降ろしてください」
ペトロヴィッチ監督の言葉に心が震えた。大きなため息をつくように、長年溜めこんだ不必要な想いを吐き出せた。
「ずっと忘れていたサッカーを楽しむことを教えてくれた恩人。まだまだ僕もサッカーが上達するんじゃないかとワクワクしている」と鈴木はペトロヴィッチ監督について話している。
プロになりたいと無我夢中で走り続けた少年時代。プロとしてあるべき姿を追求し続けた成長期。勝負のなかにある“楽しさ”を追い求め、夢へ向かう階段を登り続けた20代。しかし、人生を楽しんではいなかったと気づいた20代後半。そして今、ボールを蹴るだけで、これほど楽しいのかと子どもの頃を思い出す。
「夢や目標を手にするには、誰にも負けないだけの努力が必要です。でも、努力しても欲しいものが手に入らないのも現実。それでも諦めない人を尊敬するし、そういう人を応援したい。と同時に、ひとつの夢が潰えても、また新しい夢が浮かんでくる」
アテネ五輪メンバー落ちをはじめ、鈴木が現役時代に味わった挫折や苦悩は数限りない。しかし彼は、その悔しさをバネにして、奮闘してきたわけではないのかもしれない。それほど人生は単純でもないし、悔しさから解放されてこそ、新しいドアが見つかるのかもしれない。
鈴木啓太。その人生はまだまだ「終わりなき旅」なのだろうから。
取材・文:寺野典子(フリーライター)