また、スペインはゲーム運びが上手かった。得点を獲った後の試合運びも上手かったですが、守備のところの不安定さがスペインには無かったですよね。隙を作らなかったのがスペインの勝因。選手交代も頻繁に行なって、カードが出た選手を早く下げて、そういうリスクマネジメントも素早く、勝敗を分けるような状況を消していく作業というか、ベンチワークも巧みでした。投入した選手も結果を出して、選手層の厚さも感じましたし、それをゲームに生かせていました。

　そんな相手に対して、決勝をかけて戦う真剣勝負の場で、ギリギリまで追いつめたからこそ、日本も得られたモノは多いと思います。

　前半は遅れていてもチャレンジに行ってしまう場面も多少あったのですが、後半は相手のプレーの特長を考えながら、縦パスを入れられてもその後の対応に落ち着きがあって、しっかりとコースを消す、遅らせることが出来ていました。

　前後半でもきちんと試合中に修正出来ていたことは試合を重ねるごとに選手たちが成長していた証でもあると思います。
 

　また、ピッチに立った選手にしか感じられない部分もある。選手の間合いに入った時に、何をするか分からない威圧感というか、肌で感じる凄さというか、そういうものもあるんですよね。

　外から見ている人の感覚では、あとちょっとと感じられることでも、それが大きな差ということもあります。感じ方は違うと思いますが、選手たちは世界との真剣勝負を感じられたのではないでしょうか。

　次戦はそういう、試合中にも成長した部分、選手個人として得られた経験をピッチ上で表現してほしいですね。

　メキシコも延長、PK戦までやっているので、グループステージでも対戦していますが、どう戦うかは非常に難しい。どの選手も疲れています。吉田選手も試合後に言っていましたが、気持ちで片づけるだけではダメだと思うのですが、最後の一歩を動かすのは、やはり勝利への執念とかメダルへの強い想いだと思います。そういうものがひとつのプレーやゴールに繋がると思います。

　最後は勝利で終われることを心から願っています。

【著者プロフィール】
市川大祐（いちかわ・だいすけ）／1980年５月14日、静岡県出身。現役時代は日本代表の右サイドバックとして活躍したクロスの名手。1998年に17歳でA代表デビューすると、2002年の日韓W杯でも活躍。アカデミー時代から過ごした清水ではクラブ歴代３位となる325試合に出場した。2016年に現役引退後は指導者の道に進み、現在は清水エスパルスJr.ユースU-15で監督として活躍中。

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