バイエルンの成熟ぶりがうかがえた試合は――。
遠藤:では、バイエルンはいかがでしょうか。昨シーズンのCLレアル・マドリー戦で「カウンターに脆い」弱点を露呈しましたし、グラッドバッハとヴォルフスブルクにもそこを突かれました。
浜野:ボールの失い方が悪かったり、ゲーゲンプレッシング(ボールロスト後の即時奪回を狙うプレス)が上手くはまらないと、さすがにカウンターを浴びた際は苦しかった気がします。
それはセンターバックの質が足りなかった影響も大きいです。世界有数の存在であるボアテングは、2人が必要な場面でも1人で防いでしまうことが多々ありますが、もうひとりのセンターバック(ダンチ、ベナティア、バドシュトゥバー)が彼ほどのレベルになく、カウンターを防ぐ存在として不十分でした。
遠藤:では、2年目のペップのバイエルンが進化を感じさせた部分は?
浜野:成熟ぶりがうかがえたのは、ポルトとのCL準々決勝・第2レグです。今シーズンのベストゲームに挙げられるでしょう。
遠藤:負傷中のロッベン、リベリ抜きで、6-1の大勝を収めた一戦ですね。
浜野:彼ら抜きで大勝したことに、バイエルンの成長が見て取れたと思います。ロッベンとリベリがいれば、どんな相手に対してもほぼ苦労せずに攻撃の形を作ることができますので。
バイエルンを抑える時の有効策のひとつとして考えられるのが、司令塔のシャビ・アロンソをマンマークすることです。第1レグのポルトはその策を講じて、勝利を収めることができました。
遠藤:しかし、第2レグのポルトはそれが上手くできなかったですね。
浜野:ビルドアップ時のアロンソがふたりのセンターバックの間ではなく、ボールを持っているセンターバックの外側に流れるポジショニングを多用していたからです。それにより、アロンソをケアするポルトのセンターフォワード(マルティネス)を迷わせていました。センターバックとアロンソのどちらを追うべきか、と。
アロンソを追えば、必然的に中盤の底にスペースが生まれます。そのスペースにドリブルで持ち上がったセンターバックが、最前線のミュラーとレバンドフスキに楔のパスを入れていました。これこそ「アロンソ封じ」に対するグアルディオラの回答でしたね。
遠藤:準決勝のバルセロナ戦はいかがでしたか。バイエルン自慢のパスワークをハイプレスで封じられ、ボールポゼッションはそれほど高まりませんでした。
浜野:怪我人が多かったですし、バイエルンは満身創痍の状態でした。その状況で、できることをすべて実践したのではないでしょうか。とくに驚かされたのは、試合開始時点のオールコートでのマンツーマンでした。
遠藤:ドイツ代表のスカウトチームの一員として、最先端の戦術を日夜研究していた浜野さんにとっても、ペップはやはり最高の教材でしょうか?
浜野:グアルディオラの戦術を解明するのは、いつも謎解きのような感覚です。たまに理解に時間を要しますが、すべてに意図があるのでとても勉強になります。
スカウトチームに所属していた頃、そういうセミナーがありましたので、グアルディオラが率いたバルサとバイエルンのビデオをよく観ていましたね。
遠藤:来シーズンのバイエルンにはどんな「進化」を期待しますか?
浜野:攻撃はもちろん、とくに守備に期待しています。相手のボールをどこでどのように奪って、空いているサイドに展開して、そこからゴールを目指すのか。守備からの攻撃に至る一連のプレーに注目しています。
構成・文:遠藤孝輔
協力:浜野裕樹(1.Jugend-Fussball-Schule Köln)
【識者プロフィール】
浜野裕樹
1988年生まれ。ドイツ・サッカー連盟公認B級ライセンス(UEFA-Bレベル相当)を保持する指導者で、現在は『1.Jugend-Fussball-Schule Köln』のU-9カテゴリーで選手育成に力を注ぐ。育成のエキスパートを志して、大学卒業後に渡独。2012年よりドイツ代表直属のスカウティングチーム『チーム・ケルン』に唯一の日本人として所属し、2014年のワールドカップでドイツ代表を陰から支えた。指導者としてのさらなる成長に加え、スポーツアナリストとしての経験を日本のために発揮できる日を夢見ている。
遠藤孝輔
1984年、東京都中野区生まれ。2005年からワールドサッカーダイジェストEXTRA、07年からワールドサッカーダイジェスト編集部に所属し、ドイツ代表およびブンデスリーガを担当。ニコニコ生放送の「ブンデスリーガチャンネル」でゲスト解説を務めた時期も。ドイツ以外の欧州サッカーにも精通し、日本代表のアギーレ前監督が退任した際、真っ先にハリルホジッチを後任候補のひとりに挙げた。14年に日本スポーツ企画出版社を退社。現在はフリーライター兼編集者として活動する。
浜野:ボールの失い方が悪かったり、ゲーゲンプレッシング(ボールロスト後の即時奪回を狙うプレス)が上手くはまらないと、さすがにカウンターを浴びた際は苦しかった気がします。
それはセンターバックの質が足りなかった影響も大きいです。世界有数の存在であるボアテングは、2人が必要な場面でも1人で防いでしまうことが多々ありますが、もうひとりのセンターバック(ダンチ、ベナティア、バドシュトゥバー)が彼ほどのレベルになく、カウンターを防ぐ存在として不十分でした。
遠藤:では、2年目のペップのバイエルンが進化を感じさせた部分は?
浜野:成熟ぶりがうかがえたのは、ポルトとのCL準々決勝・第2レグです。今シーズンのベストゲームに挙げられるでしょう。
遠藤:負傷中のロッベン、リベリ抜きで、6-1の大勝を収めた一戦ですね。
浜野:彼ら抜きで大勝したことに、バイエルンの成長が見て取れたと思います。ロッベンとリベリがいれば、どんな相手に対してもほぼ苦労せずに攻撃の形を作ることができますので。
バイエルンを抑える時の有効策のひとつとして考えられるのが、司令塔のシャビ・アロンソをマンマークすることです。第1レグのポルトはその策を講じて、勝利を収めることができました。
遠藤:しかし、第2レグのポルトはそれが上手くできなかったですね。
浜野:ビルドアップ時のアロンソがふたりのセンターバックの間ではなく、ボールを持っているセンターバックの外側に流れるポジショニングを多用していたからです。それにより、アロンソをケアするポルトのセンターフォワード(マルティネス)を迷わせていました。センターバックとアロンソのどちらを追うべきか、と。
アロンソを追えば、必然的に中盤の底にスペースが生まれます。そのスペースにドリブルで持ち上がったセンターバックが、最前線のミュラーとレバンドフスキに楔のパスを入れていました。これこそ「アロンソ封じ」に対するグアルディオラの回答でしたね。
遠藤:準決勝のバルセロナ戦はいかがでしたか。バイエルン自慢のパスワークをハイプレスで封じられ、ボールポゼッションはそれほど高まりませんでした。
浜野:怪我人が多かったですし、バイエルンは満身創痍の状態でした。その状況で、できることをすべて実践したのではないでしょうか。とくに驚かされたのは、試合開始時点のオールコートでのマンツーマンでした。
遠藤:ドイツ代表のスカウトチームの一員として、最先端の戦術を日夜研究していた浜野さんにとっても、ペップはやはり最高の教材でしょうか?
浜野:グアルディオラの戦術を解明するのは、いつも謎解きのような感覚です。たまに理解に時間を要しますが、すべてに意図があるのでとても勉強になります。
スカウトチームに所属していた頃、そういうセミナーがありましたので、グアルディオラが率いたバルサとバイエルンのビデオをよく観ていましたね。
遠藤:来シーズンのバイエルンにはどんな「進化」を期待しますか?
浜野:攻撃はもちろん、とくに守備に期待しています。相手のボールをどこでどのように奪って、空いているサイドに展開して、そこからゴールを目指すのか。守備からの攻撃に至る一連のプレーに注目しています。
構成・文:遠藤孝輔
協力:浜野裕樹(1.Jugend-Fussball-Schule Köln)
【識者プロフィール】
浜野裕樹
1988年生まれ。ドイツ・サッカー連盟公認B級ライセンス(UEFA-Bレベル相当)を保持する指導者で、現在は『1.Jugend-Fussball-Schule Köln』のU-9カテゴリーで選手育成に力を注ぐ。育成のエキスパートを志して、大学卒業後に渡独。2012年よりドイツ代表直属のスカウティングチーム『チーム・ケルン』に唯一の日本人として所属し、2014年のワールドカップでドイツ代表を陰から支えた。指導者としてのさらなる成長に加え、スポーツアナリストとしての経験を日本のために発揮できる日を夢見ている。
遠藤孝輔
1984年、東京都中野区生まれ。2005年からワールドサッカーダイジェストEXTRA、07年からワールドサッカーダイジェスト編集部に所属し、ドイツ代表およびブンデスリーガを担当。ニコニコ生放送の「ブンデスリーガチャンネル」でゲスト解説を務めた時期も。ドイツ以外の欧州サッカーにも精通し、日本代表のアギーレ前監督が退任した際、真っ先にハリルホジッチを後任候補のひとりに挙げた。14年に日本スポーツ企画出版社を退社。現在はフリーライター兼編集者として活動する。