――今後、景気が良くなり、デフレから脱却ができた場合、JリーグやJクラブの収益は改善していきますか？
 
「まず、広告については、JリーグやJクラブのそれは景気とリンクしています。デフレ下で広告収入が落ちて、Jリーグ本体に入る収益を引き下げ、さらに地方経済が冷え込み、地方のクラブ経営を圧迫してきました。
 
　しかし、景気が良くなれば、単純に考えれば企業収益が改善して広告量が増え、JリーグやJクラブの広告収入が増え、地方も活性化して、地方の中小企業も広告が出せるようになっていきます。
 
　もっとも、観客動員の入場料収入、グッズ販売収入等に関しては少し違います。基本的には、景気が良くなれば、サッカーに対してお金を落とす人がより多くなっていくはずです。しかし、ここで気をつけなければいけないのは、景気が良くなると、レジャー産業全体が活性化することです。また、お金回りが良くなると、人は、従来よりも高級感のあるレジャーをやりたがる傾向があります。
 
　すると、景気が良くなることで、今後はサッカーよりもお金がかかる、海外旅行や車などによりお金を使うという行動パターンが見られるようになるでしょう。景気が良くなれば、楽観的な見通しでは、以前よりJリーグやJクラブの経営が楽になる可能性は高まりますが、サッカー以外のレジャー産業にお金を落とす人も増えるので、単純にサッカー界の景気が良くなるとは限らないのです」
 
――それでは今後、日本経済の景気が良くなったとして、Jリーグがその恩恵を十分に受けるようにするためにはどうすればいいでしょうか？
 
「今のJリーグが、景気が良くなった場合にその恩恵を十分に受けられるかどうか。そこには微妙な問題があります。Jリーグが利益を上げるためには、景気に左右される要因と、構造的な要因のふたつの側面から考えていく必要性があります。
 
　景気が良くなることで、少なくとも企業からの広告収入が増え、観客入場者数も増加が期待されます。しかし、他のレジャー産業との競争に勝利するためには、Jリーグが有する、構造的な問題点を考えなければなりません」
 
≪第３回に続く≫
 
解説：田中秀臣
PROFILE　たなか・ひでとみ／上武大ビジネス情報学部教授。専門は日本経済思想史、日本経済論。リフレ派論客のひとりで、サブカルチャーにも詳しい。「日本経済復活が引き起こすAKB48の終焉」（主婦の友社）、「AKB48の経済学」（朝日新聞出版）、「デフレ不況　日本銀行の大罪」（朝日新聞出版）など著書多数。
 
取材・文：石田英恒（スポーツライター）