天才少年少女の経営者はいない
従業員は私と同じ人間で、ある意味、生ものです。私だって妻と喧嘩すれば不機嫌だし、体調を崩せば気力も萎えます。だから、組織を動かすうえで従業員のコンディションは常に気にかけています。いくら才能があっても、コンディションが悪ければ力を発揮できない。そうなっては意味がありません。
サッカーもそうですよね。コンディションがすこぶる良いチームがいわば格上のタレント集団を倒すケースは決して少なくありません。
ただ、従業員のコンディション、モチベーションといった部分を気にしすぎて、彼らに寄り添い過ぎるのもよくありません。例えばサッカーの試合で3点リードされて放心状態になった時、チームリーダーから「ここからどうしたい?」と言われたら萎えますよね。
組織を上手く回すには従業員と付かず離れずの関係を保ったうえで、しっかりと方針を示す必要があります。時には従業員から反発を受けることもありますが、そういうものも消化しながら根気よくやっていくのが経営です。私利私欲のためではなく、日本サッカーの未来のためになるというベクトルさえブレなければきっと良い方向に行くと信じています。
サッカーもそうですよね。コンディションがすこぶる良いチームがいわば格上のタレント集団を倒すケースは決して少なくありません。
ただ、従業員のコンディション、モチベーションといった部分を気にしすぎて、彼らに寄り添い過ぎるのもよくありません。例えばサッカーの試合で3点リードされて放心状態になった時、チームリーダーから「ここからどうしたい?」と言われたら萎えますよね。
組織を上手く回すには従業員と付かず離れずの関係を保ったうえで、しっかりと方針を示す必要があります。時には従業員から反発を受けることもありますが、そういうものも消化しながら根気よくやっていくのが経営です。私利私欲のためではなく、日本サッカーの未来のためになるというベクトルさえブレなければきっと良い方向に行くと信じています。
天才少年少女のピアニストはいるけど天才少年少女の経営者はいないと、そう教えられたことがあります。経営は先天的な才能やセンスで実践できるものではなく、極めて後天的なものです。社会生活に身を置き、そこでの苦しみや痛みを学んで「じゃあ、どうしよう」となるわけで、こうした経験がなければ商品開発などにおいてアイデアが出てくるわけがありません。生まれ持った才能だけで、ヒット商品を世の中に届けることなんて不可能なわけです。それは強く感じます。
とはいえ、私自身が社会を知っているかと言えばそうではありません。リモートワークで自宅にいる時間が増えてからは、如何に自分が無知だったかを思い知られています。猫の餌にこんな種類があったのか、ゴミの出し方にこんなパターンがあったのか、粗大ごみの出し方はこんなに複雑なのか、近所のスーパーでは何が安いのかなど“気づき”ばかりです。
身近な生活から本質を知れる部分はあります。自分が思っているほどJリーグの話題は世の中に伝わっていないというのは組織の外に出て感じたことで、会社の中に缶詰めになっていたら絶対に分からない感覚でした。逆にどういう方がサッカーに興味を示していて、チケットを買うのかも分かりましたし、リモートワークになってJリーグの現在地がより明確に理解できたような気はしています。
<プロフィール>
村井 満(むらい・みつる)/1959年8月2日生まれ、埼玉県出身。浦和高在学中はGKとして冬の選手権予選にも出場した。早稲田大卒業後、リクルートに入社。そこで執行役員を務めるなどして、14年1月31日、大東和美氏のあとを受けて第5代Jリーグチェアマンに就任し、現在に至る。
取材・構成●白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集長)
とはいえ、私自身が社会を知っているかと言えばそうではありません。リモートワークで自宅にいる時間が増えてからは、如何に自分が無知だったかを思い知られています。猫の餌にこんな種類があったのか、ゴミの出し方にこんなパターンがあったのか、粗大ごみの出し方はこんなに複雑なのか、近所のスーパーでは何が安いのかなど“気づき”ばかりです。
身近な生活から本質を知れる部分はあります。自分が思っているほどJリーグの話題は世の中に伝わっていないというのは組織の外に出て感じたことで、会社の中に缶詰めになっていたら絶対に分からない感覚でした。逆にどういう方がサッカーに興味を示していて、チケットを買うのかも分かりましたし、リモートワークになってJリーグの現在地がより明確に理解できたような気はしています。
<プロフィール>
村井 満(むらい・みつる)/1959年8月2日生まれ、埼玉県出身。浦和高在学中はGKとして冬の選手権予選にも出場した。早稲田大卒業後、リクルートに入社。そこで執行役員を務めるなどして、14年1月31日、大東和美氏のあとを受けて第5代Jリーグチェアマンに就任し、現在に至る。
取材・構成●白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集長)