「“壁を壊す”のは想像を絶する作業だった」。村井チェアマンの組織形成・改編論

カテゴリ:Jリーグ

白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

2021年04月27日

机に縛られて仕事をする時代は終わった

14年のチェアマン就任当初(写真)は51クラブの挨拶回りがあり、チェアマン室にほとんどいなかったという。写真:サッカーダイジェスト

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 余計な壁を取り除いて風通しが良くなってからの社内改革は早かったです。大きな変化のひとつが、フリーアドレス。自席の概念をなくし、自由に席を選んで働くスタイルです。チェアマン室がない私も空いている席に座って業務をこなすと、従業員の様子がよく分かります。どういう件でお客さんに謝罪しているとか、その場で生の情報をキャッチできますし、一方で私が何かしらの打ち合わせで話している内容に聞き耳を立てている従業員もいます。

 比較的自由なため、従業員一人ひとりの行動を正確に把握できない点でマネジメントの部分で課題はあります。とはいえ、働きやすくなったのは事実でしょう。フリーアドレス導入以前は与えられた靴に足を強引に押し込むみたいな窮屈な作業をしていましたが、今は逆で、自分の足に合わせて靴を選ぶような働き方になっていますから。

 組織改編の延長線上にコロナ禍があって、そのタイミングでリモートワークに移行しますが、なんの抵抗もありませんでした。上司が自席に座って目の前の部下に威厳を示すような働き方からはすでに脱却していたので、従業員もすんなり受け入れてくれたのです。コロナが終息しても今のスタイルを貫く方針をすでに打ち立てています。机に縛られて仕事をする時代は終わったのです。
 
 ちなみに、リモートワークへの移行で、海外でプレーする選手との距離も近づきました。『スナックH&M』という社内のオンラインイベントでは、私と原博実(Jリーグ副理事長)さんがゲストに長谷部誠選手、岡崎慎司選手、長友佑都選手、吉田麻也選手、本田圭佑選手、香川真司選手などを招いて、従業員も交えて語り合うことができました。実際に会うとなったら不可能ですが、オンラインならできる。これはある意味発見でしたよね。

 もっとも、組織の枠組みが良いだけでは会社として機能しません。実はチェアマン室を廃止する前、その部屋を役員4人で使っていた時期がありました。私から専務たちにお願いしてそうしたのですが、他の従業員からすれば“単なる上層部の塊”で、そんな部屋に近づきたくありませんよね。良かれと思ってやったことがデメリットを生むひとつの例だと捉えています。

 コミュニティを形成する際、ひとつのキーファクターになるのが同質性です。例えば県人会、同窓会、サッカー好きが集まるサークルなど、同質性を持つ人間同士が集まると意思疎通がスムーズで、絆が深まります。ただ、同調できない人間は排除される側面も持ち合わせています。組織で言うと、分かりやすいのが学閥です。ある意味、人種差別もそうでしょう。

 同質性が悪いと言っているわけではなく、そこに潜むデメリットも理解したうえで組織を作らないといけないということです。関連6社の壁を取っ払って、株式会社Jリーグホールディングスを設立したのも、同質性を薄めることで得られるメリットのほうが大きいと感じたからです。
 
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