今季最終ラインを牽引してきたA・バイアが負傷により大事を取って欠場し、豪快な攻撃参加が武器の三竿もスタメンを外れた。代わって先発に抜擢されたのが、坪井、島村というベテラン組である。加えて、前線のB・セザル、アリソンのブラジル人コンビもスタメンから外れた。少なからず「賭け」の要素は含まれ、この試合を、勝つか、負けるかで、今後の展開は大きく変わっていたに違いない。
 
　その結果、チームの苦しい時代を支えてきた生え抜きの島村が「泥臭い勝利。たくさん走ったり、球際だったり、自分たちらしいスタイルで勝つことができた」と、確かな実感を得られる勝利を掴んだ。
 
　チーム最年長の坪井が意地を見せ、苦労人の島村が２点を決めた。途中出場のキム・ジョンピルの闘志溢れるプレーも光った。加えて、内容的にも湘南らしいスタイル(戦術的にも、全員サッカーという意味でも)を見せつけたとあって、この１勝は勝点３以上の価値があると言っても過言ではないかもしれない。
 
　と、明らかにホーム初勝利に担当記者が昂揚する一方、選手は「あくまでも通過点」と、かなり冷静に受け止めている。
 
「GWの連戦が続くので、ここで負けていたら確かに焦っていた。勝ったことは自信になる。とはいえ、過信はいけない。引き締めないと。今日は喜ぶ。でも、１日だけ。明日にはもう切り替えて、練習に臨む」
 
　前線で躍動した高山はそう言って、勝って兜の緒を締めた。
 
　次節は５月２日に敵地で名古屋戦を迎える。あらゆるポジションにタレントが揃う手強い相手だ。再び「原点回帰」で掴んだ自信と手応えが試される。いずれにせよ、苦しみながらも湘南は2015年、ホームでのリーグ戦初勝利を掴み、同時にチームとしてJ２とJ１の間にあった、目には見えないが明らかに存在していた固い殻を打ち破った。
 
取材・文：塚越 始（サッカーダイジェスト編集部）