佐藤　20歳くらいで結果を残すのは難しいんですけどね。それこそ10代からバリバリに試合に出たナラさんのようなエリートは少ないですから。

楢﨑　俺はエリートじゃないよ。

中村　いやいや、ナラさんがエリートじゃなかったら、誰がエリートなんですか（笑）？

楢﨑　俺はたまたま、巡り合わせだから。先輩が３か月の出場停止となり、その後に監督が交代して、たまたま起用してもらっただけだから。

中村　でも長年、ポジションを守ったわけでしょ。それはすごいですよ。

楢﨑　いやいや、俺の30年前の話はいらんねん。今年の話だから（笑）。

佐藤　でもやっぱり若くして試合に出続けるのは難しいじゃないですか。

中村　ナラさんのようにポジションを守り続ける秘訣を知りたいです。

楢﨑　なんでや（笑）。そんなのふたりとも分かってるやろ（笑）。

中村　でも知りたいですよ。僕らはＪ２から始まってますから。若い選手の勉強にもなると思います。

佐藤　ナラさんにしか語れないことがあるはずですよ。

中村　俺らは雑草ですから。

楢﨑　いやいや、俺も雑草だからね。でも活躍の秘訣は分からないよ。18、19歳ごろから意識していたこと、なんだろうな……。俺は遠い先を見ていたわけではないからね。目の前のことしか見てなかった。最初に入団して一緒に練習していた先輩が見ている風景はどんなだろうと、それを見たくてしょうがなくて練習して。そしてそれが見られるようになると、さらに上の人の景色を見たくなる。その繰り返しだったよね。だから真新しいことなんてないんだよ。

佐藤　５年後、10年後を意識していたわけではないということですね。

楢﨑　活躍できないとチームにいられないという危機感は常に持っていたからね。だから必死だった。

佐藤　それはケンゴくんも一緒？

中村　俺なんて大学４年の時にスカウトじゃなくて、自分からお願いして練習参加させてもらって、そこから半年後に内定をもらった身だから危機感しかなかったよ。大卒１年目で活躍できなかったらクビだと考えていたから。だから先は見ていなかったな。目の前にあることに必死に臨んで、見える景色が変わっていったということかな。だからナラさんと一緒かもしれない。

楢﨑　そう、だから特別なことなんて何もないんだよ。今の子は、もしかしたら海外とか、大きな目標を持っているかもしれないから、俺らのような考えがフィットするか分からないけど、やれることを必死にやる。結局はそこだよね。Ｊリーグで試合に出られるようになったら、その立場をキープできるように努力する。そうしていけば、次は代表とか世界は広がっていくのかなと。ちょっとずつの歩み。それが進歩していくということなんじゃないかな。

中村　日々の積み重ねの延長線上に高みはあるということですよね。

楢﨑　目標に向かって何をやるかは個々で変わるはずだけどね。立場やポジションは違うわけだし。

――現役選手たちに向けても良いメッセージになると思います。

楢﨑　いやいや大した話ではないんです。ケンゴもヒサトもそうでしょ。

佐藤　いや素晴らしい言葉です。

中村　結局はそういうことなんだなと、皆も思いますよね。目標を持つことは良いことだけど、先のことばかりを見てもしょうがない。逆算ばかりして動くのではなく、とにかく目の前のことに全力で挑めと。

楢﨑　皆、そうやっていると思うし、必死で取り組んでいると思うけどね。ただ必死にやって、だんだん周りが見えてくるものなのかなと。そういう感覚を研ぎ澄ませていくと。

――すごくタメになる話で今回の鼎談を締められそうです。

楢﨑　いや最後に全然、リーグの展望になってないけど（笑）。でもチャンスを得られている選手もいるだろうし、Ｊリーグを盛り上げてもらいたいよね。ケンゴやヒサトもそうだし、ヤット（遠藤保仁）もＪリーグを大事にして引っ張ってきてくれた。海外に挑戦する選手も、もちろん日本サッカーの進歩に大きく貢献しているけど、Ｊリーグを盛り上げ、質を高めることも日本サッカーの発展には必要。それをぜひ見せてほしいよね。

中村　さすがです、ナラさん、今後も引っ張っていってくださいよ!!

佐藤　素晴らしい締めですよ。またぜひこの企画やりましょう。

楢﨑　そうするとまた試合映像を見直さなくちゃいけないからな（笑）。

佐藤　それは勉強してください!!

――ぜひ、よろしくお願いします!!

佐藤　ゴールデンウィーク明けあたりに２回目、期待しています!!

中村　スパン短っ、でもぜひ!!

楢﨑　準備しておきます（笑）。

■プロフィール
ならざき・せいごう／1976年４月15日生まれ、奈良県出身。日本を代表するＧＫで、18年限りで現役を引退。現在は後進の育成に励み、名古屋でクラブスペシャルフェロー、アカデミーダイレクター補佐、アカデミーＧＫコーチを務め、先日ＪＦＡナショナルトレセンコーチにも就任。

なかむら・けんご／1980年10月31日生まれ、東京都出身。川崎一筋を貫いた“バンディエラ”で昨年限りで現役を引退。今年、川崎のフロンターレ・リレーションズ・オーガナイザー（FRO）に就任した。育成現場で指導法を学びつつ、解説業やクラブのＰＲなど様々な分野で活躍。

さとう・ひさと／1982年３月12日生まれ、埼玉県出身。歴代最多となるＪ１、Ｊ２通算220点を奪った生粋のゴールハンターで名古屋では楢﨑と共闘。2020年限りで現役を引退した。今後のテーマは“ストライカーの育成”であり、解説者などとしても幅広く活動している。

取材・文●本田健介（サッカーダイジェスト編集部）