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新連載【フットボール最前線】ピッチ上に革新をもたらすか――「最後の未開拓分野」セットプレーの可能性と限界

カテゴリ:ワールド

片野道郎

2015年02月20日

労力を「割に合う」ものにするための術は…。

セットプレー専門コーチのヴィオ(右)を迎えたミランだが、狙った効果を得られているとは言い難い。(写真はパレルモ時代) (C) Getty Images

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 セットプレー成功の最大の鍵は「意外性」だ。一度手の内が読まれてしまえば、すぐに対策が取られてしまうため、継続的に成功させるためには、相手が読み切れないだけのバリエーションを持ち、手を変え、品を変えて繰り出すことが絶対条件だ。しかし、それだけのバリエーションを使いこなせるようになるためには、かなりの時間と労力が必要となる。
 
 トレーニングにもっと時間を割けばいいかといえば、話はそれほど単純でもない。
 
 セットプレーには、ジャンプなど負荷の高いアクション、そして激しいフィジカルコンタクトが伴うため、十分に身体が温まっている状態で行なわなければ筋肉系の故障を誘発するリスクがある。
 
 しかし、実際に行なう時には止まっている時間が長いため身体が冷えやすく、さらに選手たちの集中力を持続させるのも難しいため、練習にあまり長い時間をかけることができない。週2回・12~15分ずつというのは、最低ラインであると同時に、現実的に費やすことができる上限にも近い時間らしいのだ。
 
 前述のヴィオは、13-14シーズン限りでフィオレンティーナのスタッフから外れ、今シーズンはミランに移ってフィリッポ・インザーギ監督の下でセットプレー専門コーチを務めている。
 
 今シーズンのミランは欧州カップに出場しておらず、週1試合ペースのカレンダーで戦っているため、理屈の上ではセットプレーの練習に割く時間は取れるはずだ。実際にセットプレーの場面では、何人かがオフサイドの位置からスタートするなど、決められたパターンに従って動く場面も見られる。
 
 とはいえセットプレーからの得点は、ここまでセリエA23試合で3ゴールのみと、決して多くはない。
 
 チームが調子をつかめず試行錯誤を繰り返す中で、セットプレーの練習に費やす時間が十分に取れていないのか、あるいは単にまだその成果が現われていないだけなのか。いずれにしても、狙ったほどの効果が得られていないのが実情である。
 
 セットプレーが、いまだ切り開かれていない可能性を秘めた分野であることに疑いはない。しかし、そこで違いを作り出すために必要な時間と労力を「割に合う」ものにする術は、どうやらまだ見つかっていないようだ。
 
 そこを乗り越えることができれば、今までにない革新がピッチ上にもたらされるのだろうが……。
 
取材・文:片野道郎
 
【著者プロフィール】
1995年からイタリア北部のアレッサンドリアに在住し、翻訳家兼ジャーナリストとして精力的に活動中だ。カルチョを文化として捉え、その営みを巡ってのフィールドワークを継続発展させている。『ワールドサッカーダイジェスト』誌や当サイトでも、ロッシ監督とのコラボによる戦術解説や選手分析が好評を博す。62年生まれ、仙台市出身。
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