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新連載【フットボール最前線】ピッチ上に革新をもたらすか――「最後の未開拓分野」セットプレーの可能性と限界

カテゴリ:ワールド

片野道郎

2015年02月20日

違いを作り出すためには、練習に時間をかける必要がある。

セットプレーの可能性を示せば、その限界も示した好例がフィオレンティーナだろう。12-13シーズンにはセットプレーから23得点を挙げながら、翌13-14シーズンは5得点に留まった。 (C) Getty Images

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 ところが、続く13-14シーズン、フィオレンティーナがセットプレーから挙げた得点は、わずか5つに留まった。前年比マイナス78パーセントという大幅な減少である。
 
 なぜそうなったのかには明白な理由がある。そしてその中には、セットプレーの重要性が長年言われ続けているにもかかわらず、今なお大きな革新が生まれていないのはなぜか、という問いに対する答も隠されている。
 
 その理由はあっけないほど簡単だ。セットプレーの練習に費やす時間が大幅に削られたのだ。12-13シーズンのフィオレンティーナは欧州カップに出場しておらず、週1試合ペースのカレンダーだったため、毎週金曜と土曜の2回、それぞれ12~15分をセットプレーに充てることができた。
 
 ところがこの年4位に入ってヨーロッパリーグ出場権を得た翌シーズンは、ミッドウィークの試合が増えたことで練習時間が大幅に削られて、セットプレーの練習まで時間が回らなくなったのだ。
 
 実際、週2試合ペースで組まれたカレンダーの中で、トレーニングメニューにセットプレーの練習を組み込むのは、実際には簡単なことではない。
 
 最新のトレーニング理論では、1回のトレーニングセッションは長くても90分以内、しかもその90分を高いインテンシティと集中力を保って、流れるようにこなすことが大前提になっている。毎日のトレーニングは分刻みでプログラムされており、その中に何をどのように組み込むかは、監督の仕事の中で最も重要な部分のひとつだ。
 
 週1試合のカレンダーならば、トレーニングセッションの数は週6回(オフ1日、2部練習1日)。しかし週2試合のカレンダーだと、試合と回復だけで週7日のうち4日が潰れ、トレーニングセッションの数は実質週3回になってしまう。これは、次の試合にフォーカスを合わせた技術・戦術系のメニューを質・量両面で満足のいく形でこなすにも、十分とはいえない時間だ。
 
 他方、セットプレーで違いを作り出すためには、練習にそれなりの時間をかけることが不可欠だ。
 
 セットプレーを成功させるためには、それぞれのパターンごとに決められた動きを、全員が間違わずに正しいタイミングで的確に行なうことが必要だ。その精度を高めるためには、何度も反復練習を繰り返す以外にない。
 
 週2回・12~15分ずつというのは、おそらくその最低ラインなのだろう。それ以下の時間しか取れないならば、最初からやらない方がましということだ。そして実際にモンテッラ監督の判断も、他のより優先順位の高いメニューのために、セットプレーの練習は犠牲にせざるを得ない、というものだった。
 
 とはいえ、週1試合のペースで戦っている中堅以下のチームの中にも、セットプレーに重点的に力を入れて革新的な結果を出しているところは、イタリアに限らずほとんど見当たらないのが現実だ。
 
 もちろん、その背景にはヴィオのようなエキスパートは数少ないという現状もある。しかしそれ以上に大きいのは、監督たちの多くが、セットプレーの練習に費やす時間と労力は「割に合わない」と考えているらしいことだ。
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