【J1コラム】今季限りで柏を退団 改めて噛みしめたいネルシーニョの哲学

カテゴリ:Jリーグ

熊崎敬

2014年12月03日

「勝利への執着心はこの監督が創り出していたんだ」

3-1の快勝でホーム最終戦(33節清水戦)を飾ったネルシーニョ。試合後には退団セレモニーが行なわれ、クラブに関わる全ての人々が名将との別れを惜しんだ。 (C) SOCCER DIGEST

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 そのあたりを3人の選手に尋ねてみた。
 
 ブラジル人のストライカー、レアンドロはこう語った。
「ネルシーニョは最高峰の指導者だと思う。頭の中にある試合を、実際にぼくたちがやるように仕向けるのが上手いんだ」
 
 柏ひと筋、ネルシーニョと5年半をともにした近藤直也は、ぶれない指導者だと語る。
「まず、選手をよく観察していますよね。練習中にちょっと膝を触っただけなのに、それを見ていて悪いのかなんて尋ねてくる。でも何より凄いのはぶれないところ。勝ち続けているときって、実はだれが監督をしても問題はないんです。でも、負けが込んでくると力量が問われる。ぼくは多くの監督の下でプレーしてきたけど、日本人監督は勝てなくなると選手のせいにする人が多かった。ネルシーニョは、そういうのがない。絶対にぶれないですよ」
 
 だが、喋っている最中に近藤は「そういえば」と言って、一度だけ監督がぶれた瞬間を思い出した。昨年8月31日、鹿島アントラーズに1-3と大敗して激高したネルシーニョは、記者会見で辞めると言い出したのだ。
「でも、すぐに辞めないと言って戻ってきました。普通の人なら、そんなことできない。帰って来たときは、いつもの笑顔でしたよ。そこがいいところじゃないですか」
 
 昨年、アルビレックス新潟から柏に移籍した鈴木大輔は、新天地に赴くにあたって、柏の選手のインタビューなどを読み込んだという。その感想は「勝利への執着がみんな強いな」ということ。
「でも、このチームに来て“なるほどね”と思いました。“柏の勝利への執着心は、この監督が創り出していたんだ”と。ぼくたち選手は、だれよりも勝ちたいと思っている。でもネルシーニョは、そのだれよりもいちばん勝ちたいんです」
 
 監督業30周年を迎えたネルシーニョは、チームを勝たせる稀有な指導者。本気で優勝したいと思うチームは、礼を尽くして迎えに行くべきだろう。
 
文:熊崎敬
 
《ネルシーニョ監督 柏での成績》
2009年 J1 16位 4勝6分5敗 降格(20節から指揮)
2010年 J2 優勝 23勝11分2敗
2011年 J1 優勝 23勝3分8敗
2012年 J1 6位 15勝7分12敗 スーパーカップ優勝、天皇杯優勝
2013年 J1 10位 13勝9分12敗 ナビスコカップ優勝
2014年 J1 5位 16勝9分8敗 スルガ銀行カップ優勝
J1通算 137勝54分89敗(勝利数歴代2位)
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