【J1コラム】今季限りで柏を退団 改めて噛みしめたいネルシーニョの哲学

カテゴリ:Jリーグ

熊崎敬

2014年12月03日

圧倒的に秀でているのは理論を実践させる「表現力」。

ネルシーニョが柏にもたらしたタイトルは6つ。2年目から全てのシーズンでトロフィーを獲得している。 (C) SOCCER DIGEST

画像を見る

 とはいえ、決して守備的なわけではない。
 圧倒的なキープ力を誇るレアンドロが敵を中央に寄せることで、外にできたスペースを5バックの外のふたり、キム・チャンスと橋本和が一気に縦を突く。後ろにいるはずのふたりが突然、出てくるから効果がある。この形が的中し、前節は清水エスパルスを3-1と粉砕した。
 
 清水戦後の記者会見で、監督の存在意義について尋ねると、ネルシーニョはこう答えた。
「選手にはつねに真剣に取り組む姿勢と、勝つために起こり得るすべてを乗り越える覚悟が必要だと伝えてきました。限られた練習時間で選手にチームの規律と個々の役割を伝え、理解させる。こうプレーすべきだという考えを伝え、そのイメージを選手に信じ込ませるというのが監督には欠かせないと思います」
 
 つまりネルシーニョは、監督に必要な能力はふたつあると述べている。ひとつはサッカーという競技と試合の肝を確実に掴み取るということ。ふたつ目は、それをピッチ上に表現するということだ。
 これは容易なことではない。試合の要諦を掴んでいても、サッカーは不確定要素の多いスポーツのため、現実は上手くいかないことが多いからだ。
 
 先述したコメントからもわかる通り、ネルシーニョは論理の組み立てにも優れている。だが圧倒的に秀でているのは、その論理を実践させる「実現力」だろう。柏の試合を観ていると、彼らが何に重きを置いてプレーしているかがよくわかる。
 
 これができる監督は非常に少ない。
 Jリーグには52人の監督がいて、だれもが試合前に勝つべき術を授けて選手をピッチに送り出す。それが上手くいけば敗者はいない。降格もしないだろう。
 
 完璧な論理を構築するのなら、学者やプログラマーに任せればいいだろう。だが、それだけでは監督は務まらない。選手に論理を遂行させ、戦いに勝たせなければならない。そこには将としての器、胆力が求められる。
【関連記事】
今シーズンで勇退……。ネルシーニョ監督が柏を結束させた「VITORIA」の精神
スルガ銀行チャンピオンシッププレビュー|ネルシーニョ監督インタビュー
レアンドロ・ドミンゲスの電撃退団・移籍の裏に見える智将ネルシーニョの計算
【J1コラム】ギャンブルに近い「4-3-3」 清水を待つのは落とし穴?|柏 3-1 清水
【柏】工藤壮人 インタビュー「頭は冷静に、心は熱く」

サッカーダイジェストTV

詳細を見る

 動画をもっと見る

Facebookでコメント

サッカーダイジェストの最新号

  • 週刊サッカーダイジェスト なでしこJに続け!
    4月10日発売
    U-23日本代表
    パリ五輪最終予選
    展望&ガイド
    熾烈なバトルを総力特集
    詳細はこちら

  • ワールドサッカーダイジェスト 世界各国の超逸材を紹介!
    4月18日発売
    母国をさらなる高みに導く
    「新・黄金世代」大研究
    列強国も中小国も
    世界の才能を徹底網羅!!
    詳細はこちら

  • 高校サッカーダイジェスト 高校サッカーダイジェストVo.40
    1月12日発売
    第102回全国高校選手権
    決戦速報号
    青森山田が4度目V
    全47試合を完全レポート
    詳細はこちら

>>広告掲載のお問合せ

ページトップへ