立ち上がりの20分が勝敗を行方を決めた
試合後の記者会見でコバチは、「マルティネスを守備ラインの前に置き、ミュラーとチアゴがインサイドハーフとして相手のダブルボランチにどんどんプレッシャーをかけていくのが狙いだった」と明かしていたが、これはある意味基本的なことの徹底だ。
求めたのは個の力の連動で相手を凌駕し、それぞれの選手の良さを最大限出していくこと。負けが許されない、勝つことを厳命された試合で自身の100%のパフォーマンスを発揮するための準備をし、結果を出した。
敗れたファーブルは、「試合後のこの瞬間に『今日の采配は良くなかった』というのは簡単だ。普段通りの4-1-4-1で今日以上のサッカーになったかどうかはわからない」と語っていた。
求めたのは個の力の連動で相手を凌駕し、それぞれの選手の良さを最大限出していくこと。負けが許されない、勝つことを厳命された試合で自身の100%のパフォーマンスを発揮するための準備をし、結果を出した。
敗れたファーブルは、「試合後のこの瞬間に『今日の采配は良くなかった』というのは簡単だ。普段通りの4-1-4-1で今日以上のサッカーになったかどうかはわからない」と語っていた。
確かにそうだ。そしてもちろんファーブルが無策で臨んだはずもない。プランBやCも準備していたはずだ。試合を有利に運び、勝つ可能性を引き出すアイディアを可能な限り考え、そのなかで選んだ策だったはずだ。
誤算は、予想できないほど立ち上がり20分の出来が悪かったことだ。システムや戦術、戦略以前の問題で、ドルトムントの選手はアリアンツ・アレーナにのみ込まれてしまった。
若さや経験は諸刃の剣だ。それをどのように生かすのかが、チームの方向性と噛み合わなければならない。
経験をうまく生かしたコバチ・バイエルンと若さによるもろさを露呈してしまったファブレ・ドルトムント。両者の立場は入れ替わり、バイエルンが勝ち点1差で首位になった。だが、再び同じ条件で試合をしたとしても、同じ結果になるとは限らないのが、フットボールだ。
文:中野 吉之伴
【著者プロフィール】
なかの・きちのすけ/1977年7月27日生まれ。秋田県出身。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。2009年7月にドイツ・サッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA−Aレベル)。SCフライブルクU-15チームで研修を積み、2018-19シーズンからは元ブンデスリーガクラブのフライブルガーFCでU16監督を務める。「世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書」(カンゼン)、「ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする」(ナツメ社)執筆。オフシーズンには一時帰国して「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで様々な活動をしている。