長期離脱のたびにサポーターとの絆は強くなり続けた
森﨑の症状は少しずつ回復に向かった。ただ病状が急激によくなるはずもなく、
原因不明のめまいをずっと抱えていた状況の中、それでも彼はサッカーのトレーニングを続けた。9月下旬、めまいがおさまった頃、森﨑はトレーニングで主力組に入る。「本当にカズさんは5か月近くもブランクがあったのか」。選手たちは、驚きを隠せなかった。
10月3日、快晴で富士山もよく見えるアウトソーシングスタジアム日本平(現IAIスタジアム日本平)のピッチに現われた森﨑を、紫のサポーターは万雷の拍手で迎え、そして高らかに歌った。
「俺達の和幸、俺達の誇り」
練習中に3度、プライドを込めて森﨑の歌を歌うサポーターら、彼は深く深く、何度も何度も、頭を下げた。
「歌が、僕に突き刺さった。歌が、僕を動かした。このスタジアムのすべての人々が、僕を応援してくれているんだ」
症状が重い時は家族さえ寄せ付けず、電話もできないほど、他者との関わりを遮断せざるをえなかった森﨑が、スタジアム中が自分の味方だと感じていた。それは、サポーターの歌の力だった。当初45分の予定だった出場時間が76分まで伸びたのは、サポーターの声援が森﨑を動かしてくれたのだ。
試合後、何度も何度も繰り返される「俺達の誇り」の歌声に、森﨑は拍手で応えた。ロッカーに戻った後、もう一度飛び出し、頭を下げた。この時から、森﨑和幸とサポーターの間にある絆が、鋼のように強くなったのだ。そしてその絆は、2010年・2017年・2018年と続いた長期離脱のたびに、強くなり続けた。
原因不明のめまいをずっと抱えていた状況の中、それでも彼はサッカーのトレーニングを続けた。9月下旬、めまいがおさまった頃、森﨑はトレーニングで主力組に入る。「本当にカズさんは5か月近くもブランクがあったのか」。選手たちは、驚きを隠せなかった。
10月3日、快晴で富士山もよく見えるアウトソーシングスタジアム日本平(現IAIスタジアム日本平)のピッチに現われた森﨑を、紫のサポーターは万雷の拍手で迎え、そして高らかに歌った。
「俺達の和幸、俺達の誇り」
練習中に3度、プライドを込めて森﨑の歌を歌うサポーターら、彼は深く深く、何度も何度も、頭を下げた。
「歌が、僕に突き刺さった。歌が、僕を動かした。このスタジアムのすべての人々が、僕を応援してくれているんだ」
症状が重い時は家族さえ寄せ付けず、電話もできないほど、他者との関わりを遮断せざるをえなかった森﨑が、スタジアム中が自分の味方だと感じていた。それは、サポーターの歌の力だった。当初45分の予定だった出場時間が76分まで伸びたのは、サポーターの声援が森﨑を動かしてくれたのだ。
試合後、何度も何度も繰り返される「俺達の誇り」の歌声に、森﨑は拍手で応えた。ロッカーに戻った後、もう一度飛び出し、頭を下げた。この時から、森﨑和幸とサポーターの間にある絆が、鋼のように強くなったのだ。そしてその絆は、2010年・2017年・2018年と続いた長期離脱のたびに、強くなり続けた。
「お医者さまに言わせれば、主人は身体が強いんだそうです」
傍で彼をずっと支え続けた愛妻・志乃さんは、ドクターの言葉を教えてくれた。
「この病気は、そんなに簡単に乗り越えられるものではないんです。(寝たきりなどの)シビアな状況になるケースも少なくない。ご主人のような身体の強さがなければ、これほど何度も回復することはできない」
志乃さんは「そんな強い身体に育ててくれた両親に感謝です」と笑顔を見せた。もちろん、森﨑が5度にわたってこれほどの苦境から立ち直った不屈の男たる本質は、頑健な身体と諦めない精神にあることは間違いない。サポーターの存在も大きかった。監督やチームメイト、クラブのスタッフも、弟・森﨑浩司も助けてくれた。
だが、最大の力が何だったのか、それは森﨑和幸自身がよく分かっている。
傍で彼をずっと支え続けた愛妻・志乃さんは、ドクターの言葉を教えてくれた。
「この病気は、そんなに簡単に乗り越えられるものではないんです。(寝たきりなどの)シビアな状況になるケースも少なくない。ご主人のような身体の強さがなければ、これほど何度も回復することはできない」
志乃さんは「そんな強い身体に育ててくれた両親に感謝です」と笑顔を見せた。もちろん、森﨑が5度にわたってこれほどの苦境から立ち直った不屈の男たる本質は、頑健な身体と諦めない精神にあることは間違いない。サポーターの存在も大きかった。監督やチームメイト、クラブのスタッフも、弟・森﨑浩司も助けてくれた。
だが、最大の力が何だったのか、それは森﨑和幸自身がよく分かっている。