2シャドーの適任者・香川真司の”異能”はW杯で発揮されるのか

カテゴリ:日本代表

五十嵐創(サッカーダイジェストWEB)

2018年06月03日

「上手くいった4年間ではなかった。ただ、それを一つひとつ乗り越えてきた」

「相手の怖いところでどれだけボールを受けられるか」。香川は自身のプレーのテーマをそう語った。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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 仮に、香川が最終ライン付近の高い位置でボールを受けられたとしよう。敵CBは香川をケアせざるを得ない状況になり、必然的にポジションがズレて、1トップの周りに空間が生まれる。また、敵ボランチは背後を気にしてプレスバックに来るため、ボランチや2シャドーの相棒への警戒が薄れる。サイドにしても、ウイングバックが裏を取れば、新たなパスコースが生まれる。香川には、こうした景色が見えていたのだ。
 
「あとは最後の精度。最後に0-1、0-2で負けている状況は想定できるので、そういう相手が引いた中で、相手の怖いところでどれだけボールを受けられるか。外だけで回していても怖さがないので、どれだけ相手の厳しいプレッシャーがあるなかで受けられるかがひとつ課題かなと。そこで受けられれば自分の良さも出るし、チームとしてかなり優位に立てるとすごく感じました」
 
 状況判断に長けた香川が、タイミングよく周りを使い、リターンパスを受けてさらに揺さぶりをかける。そんなシーンが頭に浮かばないだろうか。
 
 もちろん、ワールドカップで相手を押し込む時間は多くはない。いかに守って少ないチャンスで点を取るのか。日本が最もディテールを詰めるべきこの点については、チームもまったく手掛かりを得られていない。押し込まれた際の守備についても、現状では手つかずのままだ。
 
 ただ、香川本人にとってひとつだけ間違いないのは、舞台が整ったということだろう。
 
 縦へのスピードを求めたハリルホジッチ前体制よりも、ポゼッションを重視する西野体制のほうが、遥かに出場の可能性は高い。また、西野監督は3バックを「チームのベースとして持ちたいかと言えばそうではない」と言っているが、本大会までの貴重な1試合を使ってテストしたシステムが、オプションに留まるとも考えにくい。
 
 その3-4-2-1で与えられる攻撃面で役割は、香川にとって"最適"といえるものだ。自分のポテンシャルを最大限に発揮し、チームの中心として日本代表を牽引する。長く代表の10番を背負う香川が描き続けた理想像が、このポジションなら実現できるかもしれない。
 
「上手くいった4年間ではなかった。ただ、その中でもがきながら、考えながら、苦労しながら、どうやったらこの状況を打破していけるのかを考えた。常にいろんな壁があったんじゃないかなと。ただ、それを一つひとつ乗り越えてきた。絶対に諦めない強さだったり、自分自身と向き合うことであったり、そういうものが一番大事だなと感じたので、そういう想いを胸にロシアに向かえればいい」
 
 コートジボワールに逆転負けを喫し、10人のギリシャと引き分け、コロンビアに惨敗して涙を呑んだ4年前の屈辱から、ずっと胸に秘めてきた悔しさ――リベンジの機会はすぐそこに迫っている。

取材・文●五十嵐創(サッカーダイジェストweb)
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