“ニグロ”がまかり通った時代から30年――英サッカー界における差別問題に変化は?

カテゴリ:ワールド

松澤浩三

2018年01月27日

「女は強姦して、黒人は殺せ」。いまだに聞こえる劣悪チャント。

肌の色や国籍に囚われることなく、各国のスターが活躍するプレミアリーグだが、消えぬ差別といかに戦っていくかも、さらなるリーグ発展を遂げる上での課題となりそうだ。 (C) Getty Images

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 先人たちの努力も虚しく、いまだに世界には人種差別が往々にして蔓延っている。少なくともここ英国では、心の底にそういった考えを持った人間はいまだに存在している。
 
 以前、この『サッカーダイジェストWeb』でも書いたことがあるが、筆者は、2013-14シーズンのサウサンプトン対ウェストハム戦後の電車の中で、大柄の白人10人程度で構成されたウェストハム・ファンの一行が、「女は強姦して、黒人は殺せ」というチャントを繰り返していたのを目の当たりにしたことがある。
 
 また2015年には、チャンピオンズ・リーグのパリ・サンジェルマン戦を見るためにフランスの首都を訪れていた一部のチェルシー・ファンが、試合前に地下鉄の列車に乗り込もうとした黒人男性を車両からプラットフォームに押し出して、「俺たちは人種差別主義者だ!」と大声で歌ったという事件もあった。
 
 いずれも過去の話だと思われるかもしれないが、これはレジスらがプレーしていた時代とは差別に対する考え方が変わったはずの、つい最近の出来事なのだ。
 
『Kick It Out』の資料によると、プレミアリーグや下部リーグ、そして草サッカーを含めた試合会場で、差別の被害を受けた、または差別を目撃したという同団体への報告件数は、2012-13シーズンが77だったのに対し、昨シーズンは469に増えているという(注:人種差別は全体の約半数で、数字には性差別や宗教、障害者への差別なども含まれる)。
 
 報告件数が増えた要因にはSNSの普及が挙げられ、以前よりも差別問題に敏感になった世間の風潮もあるだろう。しかし、報告されているのは一部のみだろう。実際はより多くの劣悪な事件が起きていることは想像に難くない。
 
 ブレクジット(英国のEU離脱問題)や、政治的なポピュリズムの台頭もあり、排他的な思想が増長してしまった感もある昨今の英国だが、サッカー界ではレジスの死を契機に、再び人種差別問題について多くのメディアが取り上げている。
 
 偉大な先達の死は悲しいが、彼の功績を無駄にしないためにも、今後、あらゆる差別に対する考え方が正しい方向に進むように期待したい。
 
文:松澤浩三
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