ロシアンフーリガン暴動の嘘と真実――ロシアは危険なのか?

カテゴリ:国際大会

篠崎直也

2016年06月26日

検証もなく断定したり、一部の過激発言だけを取り上げたり…。

ロシア・サポーターが暴れたのは事実だが、それを伝える西側メディアの報道内容はかなり偏ったものだと、ロシア情勢に詳しい著者は指摘する。 (C) Getty Images

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 2年後に自国開催のワールドカップが控えているにもかかわらず、ロシアはピッチ上で何のインパクトを残すこともできず、1分2敗でグループステージ敗退が決定した。
 
 人々の記憶に刻まれたのは、「史上最弱」と国内メディアから批判を浴びた選手たちではなく、残念ながらマルセイユやリールで暴動を繰り広げたサポーターであろう。そして、今回の事件によって、ロシアの「武闘派フーリガン」の存在が世界に広く知れ渡ることとなったのである。
 
 もちろん、彼らの暴力や破壊行為自体は決して許されるものではなく、ロシア国内でも非難する声が圧倒的だ。
 
 しかし、西側メディアの報道には、国際政治におけるロシア排除の空気に乗じようという意図も感じられる。
 
 詳細な検証もなく「先に仕掛けたのはロシア」と断定したり、「道化」として国内では嘲笑の的となっているイーゴリ・レベデフ下院議員(過激な発言で知られるジリノフスキー自民党党首の息子)の「お前らよくやった」というツイッター上の投稿だけを大々的に取り上げたり……。
 
 政府のドミトリー・ペスコフ広報秘書官は「欧米による一連のヒステリックなロシア恐怖症」と嫌悪感を示した。
 
 では、暴動に参加したロシアの「武闘派フーリガン」とは何者なのだろうか?
 
 1980年代後半、ペレストロイカが進み西側の情報が流入すると、イングランドのフーリガンを真似るかたちで「フィルマ(英語のFirmに相当)」と呼ばれる過激な集団が各クラブに誕生。ソ連崩壊後の90年代、彼らはスタジアム内で衝突を繰り返し、混乱の時代を象徴する社会問題となった。
 
 彼らの活動は「フットボール周辺」と呼ばれ、2013年に同名の映画が製作されると、その内情の一端が周知されることとなった。
 
 フーリガンのメンバー構成は様々で、弁護士や大学教授、女性までいる。彼らの目的は喧嘩で、その舞台は郊外の森や野原である。
 
 喧嘩には「武器は己の拳のみ」、「事前に連絡を取り合い、不意打ちはしない」、「相手に敬意を持つ(つまり深刻なダメージは与えない)」といったルールがあり、スカウトと呼ばれる見張り役が倒れた者の介護をするなど、極めて組織的に行なわれている。
 
 一般人に危害を加えることはないため、国内では彼らがニュースとなることはあまりない。
 
 ロシアは軍隊の存在が大きく、兵役制度があり、格闘技が盛んな国である。
 
「ステンカ・ナ・ステンク(お互いに向かい合って一列に並ぶこと)」と呼ばれる祭日に行なわれる殴り合いの行事もあり、こうした伝統が、腕試しへの欲求にかられた「武闘派フーリガン」形成の背景にある。
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