【W杯ドキュメント】メンバー発表のドラマ|岡田監督が重視したコンセプトと闘争心

カテゴリ:日本代表

週刊サッカーダイジェスト編集部

2014年05月10日

“呪縛”からの解放が結束力をチームの高めるか。

不安を持って本番を迎えたが、結果的に出場した4大会のなかで最も満足感を得られることとなった。 (C) SOCCER DIGEST

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 矢野に与えられた役割は、ひと言で言えば「守備的FW」。勝点3、あるいは勝点1の獲得を目前にした状況で、前線から相手のボール保持者を追い回し、セットプレーの守備では高さを発揮。単に「ポスト役」や「パワープレー要員」として呼んだわけではないところに、前田遼一や平山相太の落選の理由も垣間見える。
 
 森本貴幸は、文字通りの「切り札」として呼ばれた。昨年10月から、スーパーサブ候補として招集されてきた佐藤寿人や興梠慎三よりも、フィニッシュへの迫力を持っている点が評価されたようだ。
 
 そのほか、攻撃陣の有力候補では田中達也と石川直宏が落選した。岡田監督自身、会見で「下がって守られた時に、カメルーン、オランダ、デンマークのブロックを崩すのは簡単じゃない。高い位置でボールを奪ってからの速い攻撃を念頭に置いています」と語っていただけに、縦への鋭さと、狭いスペースへ飛び込む勇気を持つふたりを選ばなかったのは意外だった。現在の彼らのコンディションやプレーに、物足りなさを感じたということなのだろうか。
 
 代わりに、そうした役回りを期待されるのが大久保嘉人と松井大輔だ。ともに指揮官から絶大な信頼を得ているが、前者は08年11月のシリア戦以来、ゴールを奪えていない。豊富なアイデアや闘争心に溢れたプレーは魅力だが、ことごとく期待を裏切ってきただけに、正直、落選が濃厚と見ていた。
 
 結局、フタを空けてみれば、岡田監督のなかの「序列」に変化は見られなかったのだ。川口は「ベンチのリーダー役」、矢野は「守備的FW」という、本大会ならではの役割での選出。主力の誰かを蹴落としたわけではなく、全体を見れば実に現実的で、想定内の結末と言えた。
 
 とにかく、今回の発表をもって、日本代表はワールドカップモードへ突入する。本大会メンバーの登録期限が6月1日のため、各国は主に予備登録30名を発表しているが、日本は迷うことなく23名をセレクト。そこには岡田監督自身が、98年大会の直前合宿で、三浦知良ら3名を外す苦い経験をしたことも影響しているはずだ。しかしそれ以上に、「メンバー選考」という呪縛から選手たちを解き放つ狙いがあったのではないか。以前、ある選手は「みんなメンバーに残りたいから、ミスを恐れている」と語っていた。
 
 5月21日の招集日、集まった23人には、もう恐れるものは何もないはずだ。カウンターへの対処などの修正点を確認しながら、いかに6月14日のカメルーン戦に向けて、チームの結束力を高めていくのか。
 
「(ワールドカップでの采配が)二度目ということでプラスがあるとしたら、チームマネジメントの面」と語る指揮官がまず、すべきこと。それは5月24日、宿敵・韓国を相手にその片鱗を見せつけ、世間の懐疑的な見方を変えることだ。
 
文・谷沢直也
 
※週刊サッカーダイジェスト2010年5月25日発売号より抜粋&整理
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