こうした活躍もあって、いつしか伊東を日本代表に推す、“代表待望論”も周囲から聞かれるようになる。しかし周りがどれほど盛り上がろうとも、伊東本人はあくまで飄々と、何を言われてもどこ吹く風とばかりに「Jリーグで結果を残していれば、そのうち呼ばれると思う」と、ことさら意識した様子もなく、気に留めない態度を見せていた。
 
　今回の代表初招集にも「嬉しいです」と簡単に心境を口にするだけで、自らの置かれている立ち位置を冷静に分析している。
 
「A代表といっても国内組だけなので、海外組が混ざった時にも入れるようにアピールしていきたい。代表に入ったからどうということではなく、チャンスの場だと捉えています」
 
　リーグ終了後に日本代表へ行き、1週間で3試合を戦うハードな日程をこなした後、再び柏へ戻って天皇杯を戦う。伊東にとって、ここまでサッカー漬けの年末は初めての経験だ。
「暇になるよりは忙しい方がいいです。別にやることがないので、サッカーができて幸せです」
 
　人見知りだが物怖じはしない。言葉は少ないが野心はある。ようやく訪れた日の丸を背負うチャンス。伊東はそのスピードで世界に衝撃を与える。
 
取材・文●鈴木 潤（フリージャーナリスト）