トップレベルと戦うには戦術やチームスピリットが肝。
ワールドカップ予選から指揮を執るヴェントゥーラ監督は就任直後、前任のアントニオ・コンテ(現チェルシー監督)から引き継いだ3-5-2を基本として戦い、今年の春からシステムを4-2-4に切り替えている。しかし、この2試合で改めて露呈したチームとしての欠点は、3-5-2で戦っていた昨秋の時点ですでに表れていたものだった。
【徹底分析】弱小マケドニアにも大苦戦…アッズーリ新監督の戦術は時代遅れ?
ヨーロッパの最前線では、クラブレベルではもちろん代表レベルにおいても、ハイプレスによる即時奪回を狙ったゲーゲンプレッシング、そうでなくとも予め決めたゾーンまでボールが入ってきたところからはアグレッシブかつ組織的なプレッシングを発動するインテンシティーの高い戦い方が、もはやスタンダードになってきている。
ドイツやスペインのような世界トップクラスのチームは、それをテクニカルなボールポゼッションと組み合わせ、常に主導権を握って敵陣で試合を進めるスタイルをすでに確立し、ほぼすべての相手に対して技術的にはもちろん戦術的にも優位に立って戦っている。
ヴェントゥーラ監督のアッズーリは、そうした最先端のスタイルに対して耐性が低いだけでなく、技術的な不利をインテンシティーでカバーしようとするイスラエルのようなチームに対しても、弱点を露呈しているのが現状だ。
つまりこれは、システムやフィジカルコンディション(これもエクスキューズのひとつに使われた)ではなく、指揮官が掲げるサッカーのコンセプト自体が、すでに乗り越えられて“時代遅れ”になっている可能性も否定できないということ。タレント力で見劣りするいまのイタリアが世界トップレベルと互角に戦うには、戦術やチームスピリットで相手を上回るしかないと、コンテ前監督が率いたEURO2016で実証されている。
過去14回連続で得ているワールドカップ出場権はイタリアにとって“当たり前”以前の問題であると考えられているが、それを手に入れるためには、予選の残り2試合(アルバニア、リヒテンシュタイン)を経て、11月に行われるプレーオフを勝ち上がる必要がある。
その相手がどこになるかはまだ不確定だが、北アイルランド、ボスニア・ヘルツェゴビナ、トルコ、アイスランド、スロバキアなど、簡単には勝たせてくれない中堅国が相手になりそうだ。はたしてヴェントゥーラ監督はそれまでに、戦術的なレベルで、あるいはさらに上位のコンセプトのレベルで、チームに何らかの修正を施すことができるだろうか。
文:片野道郎
【著者プロフィール】
1962年生まれ、宮城県仙台市出身。1995年からイタリア北部のアレッサンドリアに在住し、翻訳家兼ジャーナリストとして精力的に活動中だ。カルチョを文化として捉え、その営みを巡ってのフィールドワークを継続発展させている。『ワールドサッカーダイジェスト』誌では現役監督とのコラボレーションによる戦術解説や選手分析が好評を博す。ジョバンニ・ビオ氏との共著『元ACミラン専門コーチのセットプレー最先端理論』が2017年2月に刊行された。
【徹底分析】弱小マケドニアにも大苦戦…アッズーリ新監督の戦術は時代遅れ?
ヨーロッパの最前線では、クラブレベルではもちろん代表レベルにおいても、ハイプレスによる即時奪回を狙ったゲーゲンプレッシング、そうでなくとも予め決めたゾーンまでボールが入ってきたところからはアグレッシブかつ組織的なプレッシングを発動するインテンシティーの高い戦い方が、もはやスタンダードになってきている。
ドイツやスペインのような世界トップクラスのチームは、それをテクニカルなボールポゼッションと組み合わせ、常に主導権を握って敵陣で試合を進めるスタイルをすでに確立し、ほぼすべての相手に対して技術的にはもちろん戦術的にも優位に立って戦っている。
ヴェントゥーラ監督のアッズーリは、そうした最先端のスタイルに対して耐性が低いだけでなく、技術的な不利をインテンシティーでカバーしようとするイスラエルのようなチームに対しても、弱点を露呈しているのが現状だ。
つまりこれは、システムやフィジカルコンディション(これもエクスキューズのひとつに使われた)ではなく、指揮官が掲げるサッカーのコンセプト自体が、すでに乗り越えられて“時代遅れ”になっている可能性も否定できないということ。タレント力で見劣りするいまのイタリアが世界トップレベルと互角に戦うには、戦術やチームスピリットで相手を上回るしかないと、コンテ前監督が率いたEURO2016で実証されている。
過去14回連続で得ているワールドカップ出場権はイタリアにとって“当たり前”以前の問題であると考えられているが、それを手に入れるためには、予選の残り2試合(アルバニア、リヒテンシュタイン)を経て、11月に行われるプレーオフを勝ち上がる必要がある。
その相手がどこになるかはまだ不確定だが、北アイルランド、ボスニア・ヘルツェゴビナ、トルコ、アイスランド、スロバキアなど、簡単には勝たせてくれない中堅国が相手になりそうだ。はたしてヴェントゥーラ監督はそれまでに、戦術的なレベルで、あるいはさらに上位のコンセプトのレベルで、チームに何らかの修正を施すことができるだろうか。
文:片野道郎
【著者プロフィール】
1962年生まれ、宮城県仙台市出身。1995年からイタリア北部のアレッサンドリアに在住し、翻訳家兼ジャーナリストとして精力的に活動中だ。カルチョを文化として捉え、その営みを巡ってのフィールドワークを継続発展させている。『ワールドサッカーダイジェスト』誌では現役監督とのコラボレーションによる戦術解説や選手分析が好評を博す。ジョバンニ・ビオ氏との共著『元ACミラン専門コーチのセットプレー最先端理論』が2017年2月に刊行された。