日本代表、井手口陽介のルーツを辿る~その才能はいかにして磨かれたのか(後編)

カテゴリ:日本代表

高村美砂

2017年09月03日

母の病気を機に“改心”。資質的には稲本に近い

手倉森ジャパンに名を連ね、チーム最年少でリオ五輪に出場。GL第2戦のコロンビア戦では先発起用された。(C)SOCCER DIGEST

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 こうして様々な経験を糧に成長を続けてきた井手口だが、一度だけサッカーから離れかけたことがある。高校1年生の時だ。

「高校生になると周りの友だちがバイトを始めて……自分で遊べるお金を稼げるのが羨ましかった。ガキでしたね(笑)」と本人は言うが、実際、サッカー以外のことに気持ちが揺らぎ、練習をサボったこともあった。

 それだけではない。寮の規則を破って謹慎処分になったり、J―GREEN堺で行なわれたU-17日本代表の合宿中には、彼の中でどうしても気持ちに折り合いがつけられないことが起き、練習着を宿泊先のホテルのフロントに預け、無断で家に帰ってしまったこともある。

 それでも、サッカーのことは常に頭の片隅にあったのだろう。またクラブの指導者や高校の先生にも支えられ、井手口は次第に落ち着きを取り戻していく。さらに言えば、高校2年時に母親が病気になったことも、彼の“改心”を促した。

「お母さんが病気になって、本気でこれ以上迷惑はかけられない、早くプロになって稼がないといけないと思いました。自分にはサッカーしかないと分かっていましたしね。その頃からもう一度、サッカーに集中できるようになりました」(井手口)

 こうして再びサッカーに戻ってからは、いや、気持ちを尖らせていた時期もピッチに立てば100パーセントでサッカーに向き合ってきたからだろう。目を見張るスピードで成長を遂げた井手口は、高校3年時にクラブ史上5人目となる“飛び級”でのトップチーム昇格を決める。

 梅津は過去のG大阪ユース出身者と比較して、こう語る。

「長くアカデミーの選手を見てきましたが、なかでもファーストインパクトが強烈だったのが、家長(昭博/現・川崎フロンターレ)。それは僕とユースで同期だったイナ(稲本潤一/現・北海道コンサドーレ札幌)を初めて見た時の衝撃を上回るものでした。ただ、イナの場合は成長速度が凄かったんです。アンダー世代の日本代表から帰ってくるたびに、大げさではなく“違う選手”になっていた。

 そんなイナと似たような資質を備えていたのが陽介。しかも彼は、絶対にピッチでサボらない。というか、自分がサボることでどんなしわ寄せが起きるのかも理解して、常に冷静にプレーしている。だからどんどん伸びたんだと思います。トップチームに引き上げられてもそのスタンスは変わっていませんから、きっとまだまだ伸びるでしょうね」
 
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