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中村俊輔が振り返る自身の転機――ドイツW杯で突き付けられた力不足、そしてセルティックとの幸福な関係

カテゴリ:Jリーグ

飯尾篤史

2017年08月22日

ファン・デルサルと俊輔にとってのリベンジの機会がやってきた…。

2006-07年シーズンは、公式戦50試合に出場。国内で快進撃を見せたチームの原動力として活躍し、2季連続での2冠達成を経験する。(C) Getty Images

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 この試合でストラカンは選手の配置を変更する。右サイドの俊輔と左サイドのエイデン・マクギーディを入れ替えたのだ。当時、ストライカーではなく、高速ドリブラーとして名を馳せていたクリスチアーノ・ロナウド対策である。
 
「エイデンよりも俺のほうが守備をするからね。でも、やっていて相手が本気じゃないのは感じた。それに、こっちもただ守備をしていたわけじゃない。押し込まれた時に、周りと一緒になって自陣に戻れば、ボールを奪った時に味方が近くにいる。それでパッと預けて展開されれば、攻撃に出ていけるから」
 
 ファン・デルサルと俊輔にとってのリベンジの機会がやってくるのは、0-0で迎えた81分だ。
 
 ゴール正面やや右、距離は前回よりも遠い約25メートル。そこから数歩下がった俊輔は、前方を見つめた。
 
「ゾーンに入っていたから、流れに身を任せるだけ。決める自信はあった」
 
 俊輔が左足を振り切ると、ボールは前回よりも高く舞い上がり、鋭い弧を描く。今度は反応したオランダ代表GKが懸命に手を伸ばしたが、届かなかった。
 
 その瞬間、スタジアムが爆ぜた。
 
 このゴールを守り切ったセルティックは残り1節を残して、クラブ史上初のグループステージ突破を決めた。
 
 もっとも、俊輔がそれを知るのは、試合後しばらく経ってからだ。ロッカールームでチームメイトが喜んでいる時にはすでにスタジアム内のジムに向かっていて、ジムのTVで気が付いたのだ。
 
 このシーズン、俊輔は自身にミッションを課していた。試合後の1時間に渡る筋トレである。
 
「スコットランド・リーグだと、自分が思うようにプレーできてしまうところがある。だから、肉体的にも精神的にも自分を追い込まないと、置いていかれるんじゃないかっていう不安があった」
 
 マンチェスター・Uとの対戦に死力を尽くした後でも、いつもと変わらずジムで自分を追い込んでいたのだ。
 
―――◆―――◆―――
 
 CLでは決勝トーナメント1回戦でミランに敗れたが、国内におけるセルティックの進撃は止まらなかった。
 
 4月22日、連覇に王手を掛けたキルマーノック戦。1-1で迎えた後半アディショナルタイムに俊輔のFKが炸裂する。低い弾道のキックがゴール左サイドネットを揺らすと、俊輔はユニホームを振り回し、サポーターの中に飛び込んだ。
 
 ひと月後にはカップ戦も制して2年連続2冠を達成。俊輔自身も年間ベストイレブン、年間ベストゴール、記者協会選出のMVP、選手協会選出のMVPと、主要タイトルを総なめにする。
 
 このシーズンに俊輔は、クラブの公式戦50試合に出場したが、これは今でもキャリアハイの数字である。それは、緻密な体調管理と筋トレの成果に違いないが、一方で、日本代表への招集が控えられたこととも無関係ではないだろう。
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