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中村俊輔が振り返る自身の転機――ドイツW杯で突き付けられた力不足、そしてセルティックとの幸福な関係

カテゴリ:Jリーグ

飯尾篤史

2017年08月22日

俊輔は「夢の劇場」で自身初のCLを迎える。

CLのマンチェスター・U戦では、R・ファーディナンド(5番)ら屈強なDFと渡り合いつつ決定的な仕事もやってのける。まさに大車輪の活躍だった。(C) Getty Images

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「強豪クラブと真剣勝負をすることで足りないものが分かる。それに、セルティックでCLを戦うのは、日本代表がワールドカップを戦うのと似ているでしょ。だから、日本代表がどう戦えばいいのかが見えるんじゃないかって」
 
 振り返れば1年前、レッジーナからセルティックへの移籍を決めたのも、CL参戦のチャンスがあるからだった。
 
 前シーズンを2位で終えたセルティックは、CL予備戦への出場権を獲得していた。ところが、予期せぬことが起こる。俊輔の合流前に行なわれた予備戦に敗れ、本戦出場を逃してしまうのだ。
 
 想定外のことはまだあった。スタンドから観戦したマザーウェルとの開幕戦を思い出しながら、俊輔が苦笑する。
 
「もうびっくり。(ジョン・)ハートソンの頭を狙って蹴りまくっていたから」
 
 セルティックが繰り広げていたのは、 時代遅れの「キック&ラッシュ」だったのである。だが、まさに俊輔の獲得は、それから脱却し、ポゼッションスタイルへと転換を図るためだった。
 
 05-06シーズンの序盤、ゴードン・ストラカン監督は中盤がダイヤモンドの4-4-2を採用し、トップ下に俊輔を据えたが、ほどなくしてフラット型に変更。俊輔を右サイドハーフで起用する。
 
 これが見事にハマった。
 
「トップ下じゃないことは気にならなかったな。チームや選手の特徴を考えると、自分でも右サイドのほうがしっくりきたから。ロナウジーニョがバルサで左ウイングをやっていたでしょ。あの逆っていうイメージ。(同じく左利きで右サイドハーフを務めた)ミラン時代の(デヤン・) サビチェビッチも好きだった」
 
 右サイドで俊輔がボールを保持して時間を生み出すと、SBがオーバーラップし、FWが動き出す。連動した攻撃は右サイドから全体に波及していった。
 
 進化を遂げたセルティックは、宿敵レンジャーズから覇権を奪い返し、CL出場権を手に入れる。完成度を高めた状態で、06-07シーズンを迎えるのだ。
 
―――◆―――◆―――
 
 マンチェスターの夜空に、荘厳なCLアンセムがこだまする。
 
 06年9月13日、俊輔は自身初のCLを「夢の劇場」と謳われるオールド・トラフォードで迎えた。
 
 マンチェスター・Uとの英国名門クラブ同士の一戦は「バトル・オブ・ブリテン」と銘打たれたが、欧州最高峰の舞台における実績は比べるべくもない。
 
 だが、試合は予想を覆すシーソーゲームとなった。追いつ追われつの接戦を演出したのは、俊輔の左足だった。
 
 1-2で迎えた43分、ゴール正面やや右でFKのチャンスを得ると、俊輔がボールをセットする。助走を短くしてクイックで蹴ったボールは、壁をかすめるようにしてゴール右隅に吸い込まれていく。オランダ代表GKエドウィン・ファン・デルサルも反応できない一撃だった。
 
 もっとも、俊輔に満足感はなかった。ボールは壁を越えたのではなく、壁の中でひとりだけ飛んでいなかったルイ・サハの頭上を抜けていったからだ。
 
「あれは狙いどおりじゃなかった。サハが飛んでいたら跳ね返されていたからね。後でサハは(アレックス・)ファーガソン監督から怒られたらしい(笑)」
 
 それだけに、11月21日のホーム戦は、ファン・デルサルのみならず、俊輔にとってもリベンジの一戦だった。
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