女子サッカーでは類例のない“逆台形モデル”の実現完成へ。
ベントスはチャレンジリーグ参戦に必要な諸条件の審査を通過し、16年秋の入れ替え戦を勝ち抜いた。石山の構想にとって、なでしこリーグへの参入は重要だった。
「世界に類のない女子サッカーのピラミッド作り。それが自分のビジョンであり、ミッションなんです」
そう言うと石山は大きな紙を取り出し、実際にピラミッドの図を書き出した。最上層にトップチームのベントスがあり、次の層に大学、その下に高校、その下に中学の各サッカー部と裾野が広がっていく。ベントスにはジュニアユースがあり、ジュニアやキンダーのアカデミーもある。
「このピラミッドがウチ独自の強みなんです。女子サッカーの場合は中高大からトップチームに自由に出入りできるので、例えば高校生がベントスの試合に出て、強い相手と戦えばいい刺激になりますし、その経験を高校の部活に持ち帰れます。ベントスはベントスで、他の大学から強化指定選手を引っ張ってこなくても、ウチのピラミッドの中で戦術の幅が広げられる。非常にいい相乗効果を生むんじゃないでしょうか」
ちなみに、前述した4月末のチャレンジリーグでベントスの得点者となったのは、十文字高校を卒業したての中原と源間葉月、今春から3年生の蔵田あかりという3人だった。
十文字フットボールクラブの総監督、石山は勝利に貪欲だ。ベントスであれば目標はなでしこリーグ1部昇格で、優勝すら夢見ている。とはいえ、石山がイメージしているのはピッチ上の成果だけではない。むしろ、前述のピラミッドを縦横に広げていく取り組みにこそ、十文字フットボール構想の革新性がある。
ピラミッドの図を見ながら、石山はこう問い掛ける。
「サッカーが上手い子は、上のほうまで残っていくでしょう。でも、他の子はどうなりますか?」
そう言うと石山は、ピラミッドの図に線を加え出した。
「頂点を、左右にいくつも増やしていきます。それぞれの頂点を底辺と結ぶと、どうです? 上のほうが幅の広い逆台形になりませんか?」
ピラミッドが三角形のままだと、脱落者が出てくるはずだ。しかし、頂点がたくさんの逆台形なら――。
「指導者、トレーナー、審判など、いろんな頂点を目指せます。完成させたいのは、この逆台形モデルです」
背景にあるのが女子サッカーの構造的な問題だ。石山はピラミッドの頂点を指差しながら、指摘する。「ここまで行っても、プロとして一生食べていけるわけではない。ピラミッドが三角形のままだと、セカンドキャリアの問題が付きまといます」。
早稲田大学大学院の社会人修士課程で学んだ、平田竹男の教えをアレンジした女子サッカーの台形モデルでは“学び直し”がキーワードのひとつとなる。
「現役のなでしこリーガーは約900人。その1割でも2割でも学び直せるように、大学が門戸を開く。格好の受け皿になれるのが十文字学園女子大学なんです。資格や免許の取得に繋がる学科ばかりですから」
児童教育学科なら小学校の教員免許が取れる。食物栄養学科であれば管理栄養士に、健康栄養学科であれば保健体育の先生に、幼児教育学科であれば……と、石山は指折り数えてから、さらなる構想を口にする。
「社会人入学枠を設けて、授業料をいくらか減免する。そんな枠組みも必要になってくると思います」
「世界に類のない女子サッカーのピラミッド作り。それが自分のビジョンであり、ミッションなんです」
そう言うと石山は大きな紙を取り出し、実際にピラミッドの図を書き出した。最上層にトップチームのベントスがあり、次の層に大学、その下に高校、その下に中学の各サッカー部と裾野が広がっていく。ベントスにはジュニアユースがあり、ジュニアやキンダーのアカデミーもある。
「このピラミッドがウチ独自の強みなんです。女子サッカーの場合は中高大からトップチームに自由に出入りできるので、例えば高校生がベントスの試合に出て、強い相手と戦えばいい刺激になりますし、その経験を高校の部活に持ち帰れます。ベントスはベントスで、他の大学から強化指定選手を引っ張ってこなくても、ウチのピラミッドの中で戦術の幅が広げられる。非常にいい相乗効果を生むんじゃないでしょうか」
ちなみに、前述した4月末のチャレンジリーグでベントスの得点者となったのは、十文字高校を卒業したての中原と源間葉月、今春から3年生の蔵田あかりという3人だった。
十文字フットボールクラブの総監督、石山は勝利に貪欲だ。ベントスであれば目標はなでしこリーグ1部昇格で、優勝すら夢見ている。とはいえ、石山がイメージしているのはピッチ上の成果だけではない。むしろ、前述のピラミッドを縦横に広げていく取り組みにこそ、十文字フットボール構想の革新性がある。
ピラミッドの図を見ながら、石山はこう問い掛ける。
「サッカーが上手い子は、上のほうまで残っていくでしょう。でも、他の子はどうなりますか?」
そう言うと石山は、ピラミッドの図に線を加え出した。
「頂点を、左右にいくつも増やしていきます。それぞれの頂点を底辺と結ぶと、どうです? 上のほうが幅の広い逆台形になりませんか?」
ピラミッドが三角形のままだと、脱落者が出てくるはずだ。しかし、頂点がたくさんの逆台形なら――。
「指導者、トレーナー、審判など、いろんな頂点を目指せます。完成させたいのは、この逆台形モデルです」
背景にあるのが女子サッカーの構造的な問題だ。石山はピラミッドの頂点を指差しながら、指摘する。「ここまで行っても、プロとして一生食べていけるわけではない。ピラミッドが三角形のままだと、セカンドキャリアの問題が付きまといます」。
早稲田大学大学院の社会人修士課程で学んだ、平田竹男の教えをアレンジした女子サッカーの台形モデルでは“学び直し”がキーワードのひとつとなる。
「現役のなでしこリーガーは約900人。その1割でも2割でも学び直せるように、大学が門戸を開く。格好の受け皿になれるのが十文字学園女子大学なんです。資格や免許の取得に繋がる学科ばかりですから」
児童教育学科なら小学校の教員免許が取れる。食物栄養学科であれば管理栄養士に、健康栄養学科であれば保健体育の先生に、幼児教育学科であれば……と、石山は指折り数えてから、さらなる構想を口にする。
「社会人入学枠を設けて、授業料をいくらか減免する。そんな枠組みも必要になってくると思います」