【黄金世代・復刻版】1999 U-20日本代表メモリアル「最強の名のもとに」中編

カテゴリ:日本代表

川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)

2017年04月26日

小野と市川の不在で選手に自覚が芽生る。しかし、指揮官の決断で…。

「小野と市川がいなければ、予選突破は苦しい」と、指揮官が浦和と清水に派遣を要求。この決断により、清雲監督と選手には明らかな亀裂が。(C)SOCCER DIGEST

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 会見の場に立つ清雲監督にも、動揺が見え隠れし始める。
 
「まず大事なのは結果だから」
 
――この年代には、まず内容を要求するとおっしゃていましたが。
 
「1位突破したことが重要。問題点は、秋のアジアユースまでに修正すればいいんだ」
 
 自身が示してきた方向性と、選手たちのビジョンが合致しない。立ち上げから、非の打ちどころがない選手招集を繰り返してきた目利きの監督。しかしながらユース年代の育成者、指揮官としての力量には疑問符がつく。それを決定づけた3試合でもあったのだ。
 
―――◆―――◆―――
 
 フランスから帰国した小野について、日本協会の強化サイドはこんな発表をした。「今後は五輪とA代表に専念させる」と。
 
 これがひとつの分岐点となる。

「小野クンが戻ってくれば、また良くなる。どこかでそう思ってたフシがあったんで、ボクらにとっては逆にいいコトだったのかもしれません。頼りすぎてるっていうところが、やっぱありましたから」
 
 東福岡での華々しいプレーぶりとは一線を引き、どこか黒子的な存在だった本山は、この採決を大いに歓迎していた。

 さらには新キャプテンとなった高原を刺激し、プレーエリアの拡大を迫られたボランチ稲本にも影響を及ぼす。リーダー的な存在がひとり、ふたりと増え始めていた。
 
 迎えた8月のSBSカップ、必死に勝利を求める彼らの姿があった。たしかに組織という観点から見れば、まだまだ不十分な点が多く、不安定なイメージは払拭されていない。

 だがアジアユース本番を前に、彼らが大人への階段を駆け上がろうとしている、そんな印象を受けた。高原はケガのため不出場だったが、そのチャンスをニューカマーの播戸竜二がしっかりモノにするなど層も厚くなっている。この上昇ムードは、清雲監督がもっとも望む状況でもあったはずだ。
 
 しかしアジアユースを直前に控え、タイでのシミュレーション合宿を終えていたにもかかわらず、「小野と市川がいなければ予選突破は苦しい」と、監督は浦和と清水に派遣を要求して回ったのである。
 
「なぜ? そんなにオレたちが信用できないのか。いい雰囲気でやってたじゃないか。もうヤダよ」
 
 とある選手の言葉だ。選ばれた小野と市川も、心の準備ができていたとは考えがたい。
 
 流れは、再び逆行した。

<後編に続く>

文:川原崇(サッカーダイジェスト)
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