【黄金世代・復刻版】1999 U-20日本代表メモリアル「最強の名のもとに」中編

カテゴリ:日本代表

川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)

2017年04月26日

チームとして固まらないまま、アジアユース1次予選へ。

アジアユース1次予選は1位突破も、選手たちに笑顔はない。稲本は「このままじゃアジア王者になんかなれへん」と吐き捨てた。(C)SOCCER DIGEST

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 大ボリュームで調整期間が割かれた97年が終了し、Jリーグで活躍する稲本、酒井、さらには高校選手権で名を売った本山、中田なども、全国的な知名度を得るようになっていた。
 
 98年2月、宮崎キャンプ。ほとんどの選手がJリーグへと羽ばたくその年、ユース代表に与えられる時間はきっと数える程度だろう。その上、アジアユースという初の公式戦を控えている。大事な大事なキャンプであることは、周知の事実であった。
 
 だが、清雲監督は姿勢を崩さない。「セレクションは終わったと考えてる。個々のレベルも非常に高くなったと感じている。あとは彼らがいかにプロの世界で、能力を開花させるかだろう」
 
 と、相変わらず選手たちに自主的な意識改革を要求していた。一方で若駒たちは、監督になにか新しいもの、チームに対する強いメッセージを求めている。

 4バックの中央が確定していない。高原と前線でコンビを組むパートナーも決まっていない。そんな不安を紛らわすかのように、選手たちは監督と対話することを避け、自分たちだけの大きなサークルを作ろうと、あらぬ方向で団結していく。
 
―――◆―――◆―――
 
 6月、アジアユース1次予選。
 
 日本代表がフランスでアルゼンチンに敗れた翌日、U-19日本代表は大宮サッカー場で初の公式戦を迎えた。当然、メンタルリーダーだった小野、右サイドのスペシャリスト市川はピッチにいない。それでも十分に勝てる相手だったが、内容はいたって散漫なものとなった。
 
 ブルネイに12-0、ベトナムに2-0、香港に7-0。実力からすれば至極妥当なスコアで、浮かれた選手はひとりもいない。思わぬ苦戦となったベトナム戦後、普段はクールなストライカーが怒りを露にしていた。
 
「どうせ勝てるんだから、っていう不快なムードだったし、1人ひとりに戦う気持ちもなかった。みんなどこか甘えてるんですよ。ボクは世界で結果を出すためにやってる。でもみんなからは、そういう強い意志が感じられない」
 
 高原のこの言葉に呼応するかのごとく、観戦していた南も、うなだれ気味にサングラスを外した。
 
「去年の夏からあんまり成長してないのかな。守備はタテパス一本でやられるし、攻撃にも決まりゴトがない。期待してるんだけど」
 
 世界大会を経験してきた2選手の言葉が、重低音で響いてくる。
 
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