逆に、UAE戦で気になったのは香川だ。オマルや他のボールホルダーに対してプレスをかけ、アンカーの山口蛍や最終ラインのカバーにも奔走するなど、守備面においては与えられたタスクをこなした。しかしそれはあくまで「最低限」(香川)の内容。相手が密集する狭いエリアでも縦パスを受け、周囲の選手とパス交換・連係、または短い距離のドリブルで敵を崩していく技術は“宝の持ち腐れ”になってしまう。背番号10も「ハードワークできないと試合には出られないし、それくらい割り切ってやるしかない」と複雑な胸中を明かす。
UAE戦を迎えるにあたり、香川と今野は「速い攻撃だけじゃ難しい。自分たちのリズムになった時にはしっかりボールをつなぎながら、落ち着かせることも大事」と話していたというが、実際はポゼッションよりもカウンター色の強いゲームとなった。「カウンターがこのチームの一番の強みになりつつある」(香川)なかで、ワールドカップ進出、そしてその先の本大会を見据えるならば、背番号10の最適な生かし方を見出さなければならない。
取材・文:小田智史(サッカーダイジェスト特派)