親目線の育成論――幼少期の小林祐希と接して分かったこと

カテゴリ:高校・ユース・その他

加部 究

2016年08月24日

身体を鍛え上げる以上に肝心なのは脳への刺激だ。

清水の白崎は、中学時代を過ごしたFC東京U-15むさしでは身体も小さく、スピード不足とされユース昇格を見送られたが、小さかったからこそ巧みに身体を使って奪われないボールキープ術を身につけた。写真:田中研治

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 対照的に、愚息にとってサッカーは、むしろ義務に近いものだったのかもしれない。生まれた時から、家にはサッカーの映像、書籍、雑誌が溢れている。人間いつでも手が届くものに飢餓感は覚えない。我が家に遊びに来た祐希は、FIFAのテクニカルビデオに夢中で見入っていたが、その間愚息は自室でゲームに興じていた。
 
 FC東京U-15むさしでの進路相談で、山口隆文(現日本協会育成技術委員長)監督が、フットボーラーの成否を分けるポイントを、こう表現していた。
「サッカー小僧になれるかどうか、ですよ」
 
 好きなものには、探求欲が継続する。中村憲剛の恩師らしい言葉だった。ちなみに愚息は「高校3年間をサッカーに打ち込む覚悟があるならユースへ」と持ち掛けられるが、即答で断った。さらに3年間もサッカー漬けなど想像もつかなかったのだろう。すでに何人かの友だちが入学を決めていた山梨学院高へ進んだ。
 
 一方FC東京むさしの1学年下には、現在J2の清水でチームの中核として活躍する白崎凌兵がいた。中学時代の白崎は、まだ身体が小さくスピード不足だとユース昇格を見送られたが、山口監督からは「あんなにゲームを読めるヤツはいない」と高く評価されていた。
 
 実は成長過程で身体が小さな時期を過ごすことは、最良の成長促進剤とも言える。白崎は、当時小さくても戦える工夫をしたからこそ、今、巧みに身体を使ってボールを保持するし、当然スピードは成長とともについてくる。山梨学院高時代も、愚息の挙げたゴールの多くは、白崎のインターセプトやアシストから生まれていた。
 
 育成の原点は、徹底してボールと戯れることだ。そのなかで必要な技術、駆け引き、創造性などを磨いていく。逆に指導者は、どこかで基礎固めのために試行錯誤を課すハードルを用意する必要がある。しかしくれぐれも、それは裏づけのない理不尽な走り込みなどではない。
 
 実は日本で身体の大きな子が育たないのは、適切なハードルを用意できないことに起因しているような気がする。きっと肝心なのは、むしろ身体より、脳の刺激のほうだ。いくら身体を鍛えあげたところで、いつ何をするべきかを判断できなければ、良質なフットボーラーにはなれない。
 
文:加部 究(スポーツライター)
 
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