ゲッツェは「新しい自分」を見つけ出せるのか?

カテゴリ:ワールド

中野吉之伴

2016年08月18日

香川とともに敵ペナルティーエリア付近で違いを生み出せる存在。

トレーニング中の表情にも充実感が浮かぶゲッツェ。勝手知ったるドルトムントの環境は、再起に向けて間違いなくプラスだ。(C)Getty Images

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 ゲッツェを含めて新加入選手が多い(8月18日現在で8人)とはいえ、トゥヘルが目指すスタイルのベースは新シーズンも変わらないはず。能動的にボールを動かし、相手のズレを突いて攻撃を仕掛けるフットボールだ。
 
 ビルドアップで相手守備の狙いを外して攻撃の起点を作り出すところまでは、トレーニングを積めばチームの連携で、ある程度はカバーできるだろう。
 
 とはいえ、そこから先の崩しの局面で決定機を作り出すためには、プレーメーカーの存在が不可欠だ。チームには香川という生粋のトップ下もいるが、少なくともブンデスリーガではバイエルン以外の多くの相手が自陣深くで守備を固めてくる。それだけに、敵ペナルティーエリア付近で違いを生み出せる選手が、もう一枚必要だ。
 
 相手の分厚い守備網を崩すうえでもっとも大事なのが、“クリエーティブさ”だ。敵の動きと思考の逆を取り、何もなかったはずの場所に時間と空間を生み出すそうしたプレーは、まさにゲッツェの最大の持ち味だ。
 
 ドイツ代表の一員として出場したEURO2016のゲッツェは、実力を考えれば期待外れと言える出来だった。しかし、才能の片鱗が見えるプレーを何度か見せていた。
 
 例えば、グループステージ3戦目の北アイルランド戦でのワンプレー。ヨシュア・キミッヒが右サイドから中央に持ち込んで左足でクロスを上げると、ゲッツェはこれ以上ないタイミングで相手守備ラインの裏にすっと抜け出し、胸でコントロールしたボールを流れるような動作で右足ボレーシュートに持ち込んだ。
 
 敵GKのスーパーセーブに遭ってゴールにはならなかったが、すべてが一糸乱れぬ見事なプレーだった。
 
 こうした妙技をドルトムントでも数多く披露してくれることを、チームメイト、トゥヘル監督、そしてファンは楽しみにしている。
 
 8月上旬にドルトムントに合流したゲッツェは、髪を短く切り、3年前と同じような屈託のない笑顔でトレーニングに励んでいた。サポーターは予想以上に暖かく迎え入れているし、チームメイトのマルセル・シュメルツァーは「一度もここを離れたことがないみたいだ」と復帰を喜んだ。
 
 苦しみながらも自分と向き合い続けたフットボーラーは、その過程の中で選手としても、一人の人間としても大きく成長する。
 
「僕にとって新しい章の幕開けだ。ドルトムントでの新シーズンを楽しみにしているよ。僕のベストのプレーをみんなに見せたいんだ」
 
 そう力強く語るゲッツェの才能は言うまでもなく一級品。慣れ親しんだ古巣で落ち着いてプレーに打ち込めば、「新しい自分」を見つけ出せるはずだ。
 
文:中野吉之伴
 
※『ワールドサッカーダイジェスト』2016年9月1日号の記事を加筆・修正
 
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