日本の守備陣を切り裂いた「ガビゴール」――ブラジル人らしくないブラジル人

カテゴリ:国際大会

サイモン・クーパー

2016年08月01日

移籍先にこだわりはないが「南欧のクラブなら言うことなし」。

偉大なるネイマールに追い付き、彼の負担を減らすことができるか。その成否が、ブラジルの未来にも大きな影響を与えるだろう。 (C) REUTERS/AFLO

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 選手の推定市場価格などを独自の指標で算出しているウェブサイトの『Transfermarkt』は、ガビゴールを「ブラジル国内で今、最も価値の高い選手」としている。
 
 とはいえ、本人に欧州行きを焦る様子はない。どのクラブに移籍すべきか、新天地を慎重に見極めている。
 
 すでにフェネルバフチェからの巨額のオファーを断り、フィオレンティーナのそれも拒否したという。欧州の中規模クラブに行くことは考えていない。中国に行くことも、である。
 
 それならサントスに残り、サッカーを楽しみながら研鑽を積む道を選ぶというわけだ。巨額の年俸になびくことはない。
 
「欧州行きがいつになるか、そんな心配は全くしていない。今はその準備を整えることだけを考えているよ。ハードワークを続けながらね」
 
 移籍先については、特にこだわりはないと言う。ただし、こう付け加える。
 
「それが南欧のクラブだったら、言うことはないな。文化もサッカーもブラジルに近いし、適応しやすいと思うから」
 
 今は欧州のサッカーをテレビで見て学んでいるというガビゴールだが、この夏の最重要事項はリオ五輪だ。ブラジルは8月4日の初戦で、南アフリカと対戦する。
 
「リオ五輪はブラジルにとって、重要な大会だ。2年前のW杯の苦い思い出もあるからね。五輪の金メダルは僕たちに唯一欠けているタイトルで、この国で五輪が開催されるのも初めて。特別な大会になるだろうね。五輪は僕にとっての夢なんだ」
 
 岐路に立つブラジル・サッカーにとって、リオ五輪は文字通り、運命の分かれ目となる。金メダル獲得という悲願を果たせば、それは新時代の幕開けだ。その中心を担うのが、ガビゴールだろう。
 
 そして彼は、ネイマールらとともに、18年のロシアW杯に挑む。ミネイロンの悪夢を、そこで消し去ることはできるだろうか。
 
 ブラジルの、長く、終わりなき旅が、リオで始まろうとしている。
 
文:サイモン・クーパー
翻訳:豊福 晋
 
※『ワールドサッカーダイジェスト』2016年7月21日号の記事を加筆・修正
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