ガビゴールが他の有望株と一線を画しているのは、一般的なイメージのブラジル選手ではないからだ。つまり、落ち着きがあり、真摯にサッカーに取り組んでいる。
 
　ロールモデルは、クリスチアーノ・ロナウドとレブロン・ジェームズ（NBAのスーパースター）。２人に共通しているのは、それぞれのスポーツをとことん突き詰めようとするストイックなプロフェッショナリズムだ。
 
　例えばC・ロナウドもレブロンも、個人トレーナーを雇い、チームとは別にトレーニングを重ねる徹底したアスリートである。ガビゴールは、それに倣っている。休日返上でパーソナルコーチと練習を積み、欧州のクラブへ移籍する時には、そのコーチも連れて行くと決めている。
 
　これほどストイックにフットボールに打ち込んでいるブラジルの若手選手には、めったにお目にかかれない。
 
　そんなガビゴールの支えになっているのが家族だ。父親はマネジャーとしてビジネス面を取り仕切り、つい最近まで両親、姉と一緒に一家４人で暮らしていた。
 
「自分が段々、有名になっていくのを感じている。スイッチを切ること、オフの状態する時間が重要なんだと思う。ピッチを離れたら、できる限り静かで穏やかな時間を過ごすように心掛けているよ。家族や友人がそばにいる、昔からの生活、それを忘れないようにしている」
 
　ブラジルが深刻なタレント不足に直面しているこの時代、ガビゴールはまさに希望の光だ。２年前、ブラジルがドイツに１-７で粉砕された「ミネイラッソ（ミネイロンの惨劇）」は、彼に何を残したのか。
 
「全てのブラジル人と同じように、僕も歌い、声援を送り、そして願っていた。でもあの経験から、僕らブラジル人は多くを学ぶことができたんだ。ブラジルはもはや、世界のサッカーを牽引する存在ではないという事実を」
 
　彼が痛感したのは、欧州と南米の格差だった。なかでも切実に感じたのは、戦術面の差だと言う。
 
「戦術的にブラジルは、欧州諸国に大きく劣っている。その戦術について、今、一生懸命に学んでいるところなんだ。つい最近まで欧州のクラブに研修に行っていた、ドリバウ・ジュニオール監督の下でね」
 
　ガビゴールのゴールの大半は――彼は２年連続でコパ・ド・ブラジルの得点王だ――ノーマークで決めたもの。これは欧州では、まずあり得ない。
 
　だから、どんなに才能ある選手でも、欧州に渡ってからしばらくは、苦労を強いられる。すぐに適応して活躍するのは、至難の業だ。ネイマールでさえ、１年はかかった。その事実が、ブラジル・サッカーの“緩さ”を証明している。