Jを席巻する戦術を完成させるうえでのキーマンに。
森崎和幸の偉大さを証明する鍵は、近年の日本サッカーの潮流を読み解くなかにある。それは現在Jリーグを席巻しているのが、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督をルーツとする戦術にあり、その完成過程で森崎和幸が大きな力を発揮したという事実だ。
ペトロヴィッチ監督の戦術的コンセプトは、今も昔も変わらない。端的に言えば、攻守に人数をかけることが戦術的な基本。重要なのが最終ラインの攻撃参加で、とりわけ両サイドのストッパーは攻撃時にワイドに開き、ウイングバックのサポートをする。
だが、ストッパーが開くことで中央のスペースが大きく空いてしまうのも事実。カウンター時にそのスペースを突かれて失点してしまったことは、一度や二度ではなかった。だが指揮官は、守備のデメリットよりも攻撃のメリットを優先する男である。
きっかけは、リベロを務めていたストヤノフの嘆きだった――。
広島がJ2を戦った2008年シーズン、攻撃の起点となっていた最後尾の名手に対し、各チームはマンマークをつけてきた。FWがDFをマークするという異常事態に、ストヤノフは辟易。ボランチの森崎和に「サポートしてくれ。位置を入れ替わってくれ」と声を掛けた。13節の対福岡戦のことだ。
FWがリベロの自分につくのだから、自らが前に出れば相手はさらに自陣に下がり、ポゼッションがやりやすくなる。ストヤノフの本意はそこにあった。
だが森崎和はそこで考える。
「自分とイリアンが後ろで並べば、イリアンのサポートだけでなく、ストッパーのマキ(槙野智章・現浦和)や良太(森脇・現浦和)が思いきって前に行ける」
そう思った8番は、横にいた二人に「もっと開いてくれ」と指示。元々、攻撃的なふたりはドクトル・カズ(ペトロヴィッチ監督が森崎和につけた愛称)の言葉に嬉々として前に絡み始めた。
こうすることでストヤノフへのマンマークは意味を為さなくなった。森崎和が近くにいることで、ひとりではボールをとれなくなる。サイドに展開されると攻撃的なストッパーが推進力を持ってボールを運ぶから、供給元のストヤノフ、森崎和のふたりにプレスをかけると、今度はボランチの青山敏弘があいてくる。
ストッパーが前に出ることで自然と両ワイドがさらに前に位置をとり、攻撃で数的優位が作りやすくなった。攻撃だけではなく、懸案だったカウンター時のリスク管理もうまくいき始めたのだ。
ペトロヴィッチ監督の戦術的コンセプトは、今も昔も変わらない。端的に言えば、攻守に人数をかけることが戦術的な基本。重要なのが最終ラインの攻撃参加で、とりわけ両サイドのストッパーは攻撃時にワイドに開き、ウイングバックのサポートをする。
だが、ストッパーが開くことで中央のスペースが大きく空いてしまうのも事実。カウンター時にそのスペースを突かれて失点してしまったことは、一度や二度ではなかった。だが指揮官は、守備のデメリットよりも攻撃のメリットを優先する男である。
きっかけは、リベロを務めていたストヤノフの嘆きだった――。
広島がJ2を戦った2008年シーズン、攻撃の起点となっていた最後尾の名手に対し、各チームはマンマークをつけてきた。FWがDFをマークするという異常事態に、ストヤノフは辟易。ボランチの森崎和に「サポートしてくれ。位置を入れ替わってくれ」と声を掛けた。13節の対福岡戦のことだ。
FWがリベロの自分につくのだから、自らが前に出れば相手はさらに自陣に下がり、ポゼッションがやりやすくなる。ストヤノフの本意はそこにあった。
だが森崎和はそこで考える。
「自分とイリアンが後ろで並べば、イリアンのサポートだけでなく、ストッパーのマキ(槙野智章・現浦和)や良太(森脇・現浦和)が思いきって前に行ける」
そう思った8番は、横にいた二人に「もっと開いてくれ」と指示。元々、攻撃的なふたりはドクトル・カズ(ペトロヴィッチ監督が森崎和につけた愛称)の言葉に嬉々として前に絡み始めた。
こうすることでストヤノフへのマンマークは意味を為さなくなった。森崎和が近くにいることで、ひとりではボールをとれなくなる。サイドに展開されると攻撃的なストッパーが推進力を持ってボールを運ぶから、供給元のストヤノフ、森崎和のふたりにプレスをかけると、今度はボランチの青山敏弘があいてくる。
ストッパーが前に出ることで自然と両ワイドがさらに前に位置をとり、攻撃で数的優位が作りやすくなった。攻撃だけではなく、懸案だったカウンター時のリスク管理もうまくいき始めたのだ。