――昨季はダブル・シンジ。岡崎選手に加え、香川真司選手（現セレッソ大阪）もいました。

「ダブル・シンジがSTVVに来て２期も変わりましたよね。このふたりがヨーロッパに来る意義とかを伝えてくれました。真司は昔は天才肌でフィーリングで喋っていたけれど、いまはバランスを取って話します。彼は苦労してここまで来ましたからね。STVVでも監督とのこと、チーム状況のことで『うん!?』と思っても我慢してくれた。そういう真司の姿を見ているから、他の選手も我慢したということもありました。（原）大智（現京都サンガ）は岡崎からサウナでいろいろとアドバイスを受けていた。

　ヨーロッパでやりきって『最後、１、２年やりたいな』という選手がいるのはSTVVのようなクラブにとって大きいと思います。

　岡崎はいま、控えメンバーとして頑張ってくれている。この間、スポンサーが日本から来て、みんなが自己紹介したとき、岡ちゃんは『俺は日本代表で119試合出て50ゴール決めた。レスターでも優勝した。それ忘れるなよ』って言ったんです。鈴木彩艶、山本理仁、伊藤涼太郎、藤田譲瑠チマは『いまから頑張るぞ』ってヨーロッパに来た選手ばかり。やっぱり岡崎の持つ経験というのは、彼らにとってスゴイですよね。

　例えばCL（チャンピオンズリーグ）ベスト４でプレーしたのは日本人で内田篤人しかいないから、CLのことに関しては『CLのことは俺しかないでしょう』となる。でも岡崎からしたら『ウッチーは優勝してないよね』、香川にしたら『俺はブンデスリーガで優勝した』と。あのレベルの選手たちはそういう会話になる。
 

　岡崎はレスターで『汗かき役に徹した』と言っていました。あのときのレスターはやることがハッキリしていた。岡崎はいろいろできるようなタイプじゃないからこそ、監督の求めるサッカーを自分で整理して貫いた。その結果がレスターの奇跡。なんでレスターが優勝できたのかという話をするとき、岡崎の目は輝きますよ。若い選手をポジティブな方向に導くために、私はどうしても岡崎をSTVVに残したかった。

（第３期にあたる）若い選手はオリンピック世代なのでもっと上に行きたいという選手しかいないから、大丈夫だと思う。高い志で頑張ります」

＜後編に続く＞

取材・文●中田 徹

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