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Jリーグとはまったくの別物。ACLで体験した国際試合のインパクト【審判員インタビュー|第5回・木村博之】

カテゴリ:連載・コラム

サッカーダイジェストWeb編集部

2023年06月09日

ゲームマネジメントの視点

ACLの舞台では選手たちの"温度”が急に変わる場面もあるという。(C)SOCCER DIGEST

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――そこから国際審判員として、多くの試合でレフェリーを務めましたが、印象に残っている出来事はありますか?

「2016年3月に、レフェリー同士の交換プログラムでポーランドに行かせて頂きました。私はポーランド1部リーグのレフェリーを務めさせて頂いたのですが、サッカーの質や選手たちの強さ、接触プレーを物ともしないし、何とも思わない22人がフィールドにいたのです。

 私はポーランドに行くまで、ファウルを見落とさずにとっていかないとゲームは上手くいかないと思っていました。ですが、実際にポーランドでレフェリーを務めた時に、選手たちはファウルっぽい接触でも気にせずプレーするのです。それを見て、じゃあレフェリングも合わせようという感覚を掴みました。

『ファウルをしっかりと見極めないと』ではなく、『選手は何を求めてプレーしているのか? レフェリーに何を求めているのか?』と考えるようになりました。それは何でもかんでもファウルをとらないわけではなく、『選手がプレーを続けたいのか? ファウルで止めてほしいのか?』という部分を深く考えて感じながらレフェリングをしなければいけないのだと強く思ったのです。1部のリーグ戦2試合、カップ戦1試合、ポーランド対フィンランドの国際Aマッチの計4試合は、私にとってすごくプラスで刺激のある経験でした」
 
――今、木村さんがおっしゃられたように、Jリーグでも以前はしっかりとファウルを見極めることが要求されていたと思います。近年では、エンパシーやグレーを任されるようになったというのが私見なのですが、木村さんは審判界の変化を感じられていますか?

「2016年にレイ(モンド・オリヴィエ: 現Jリーグ審判アドバイザー)さんが私たちの指導をするようになってから、確かに変わったように思います。

 リーグ戦は90分ですが、その90分間にもゲームの波があります。ピッチ上の雰囲気も時間帯によって変わりますし、他にもひとつのインシデントで大きくテンションが上がることもあります。それに合わせて、レフェリーはどのような働きかけをすべきなのか? そういうゲームマネジメントという視点がJリーグ担当審判員に入ってきました。おっしゃられたことと同じような変化を私も感じています」

――そういった意味で、木村さんのポーランドでの経験はレフェリーとしてのターニングポイントですね。

「私がポーランドで体験したことと、レイさんの指導がすごく合っていたと思います。そのタイミングで、国際審判員として代表戦やACLでも上位の試合の割り当てを受けるようになり、少しずつ、今のレフェリングになってきたのだと思います」

――AFCの審判指導と日本に違いはあるのでしょうか?

「個人的な見解になりますが、AFCのほうがざっくりしているように感じています。たとえば、タックルなど著しく不正なファウルプレーの見方や分析はすごく細かく行ないますし、AFC全体での判定を考えるうえでのコンシダレーションポイント(Consideration point)は統一されています。

 ただ、実際に試合でレフェリーする時の懲戒罰以外の判定やマネジメントは、レフェリー自身のパーソナリティあるいはレフェリングスタイルを表現すれば良い。

 なので、当然試合の流れを重視していると思います。たとえば、試合の中のひとつの判定が受け入れられていないとします。なぜ、一見正しいと思われる判定が受け入れられていないのか。その『なぜ?』というアプローチはAFCのほうが多いように感じます」

――日本だとレフェリーの判定が合っていれば問題はないとされるし、逆にミスジャッジだと選手が受け入れていても改善ポイントとされるわけですね。個人的には、AFCのほうがしっかりとファウルを見極めなさいという指導だと思っていました。

「AFCも得点や退場に関わる判定は、慎重にシビアに分析されますが、警告にも至らないファウルやプレーに関しては、試合の流れを読みなさいという指導だと私自身は理解しています」

>>>後編に続く
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