日本代表と対戦し、現在地を確認したかった……タイ代表監督の任務と蒔いたタネ
日本代表監督を退任し19年7月、これまで一度も経験していなかった他国の代表の指揮を執るため、タイに渡った。タイでは、国際舞台での活躍できる代表チームに期待が高まっており、東京五輪を目指すU-23と2チームの監督として滑り出しは好調だった。20年、タイで行なわれたU23のアジア選手権では、グループリーグで敗退した日本に対し決勝トーナメントに進出した。
しかし、この年に始まった新型コロナウイルスによるパンデミックにより、タイ代表の活動は大きく規制され、その間にも代表チームでクラスターが発生するなど、アクセルを踏むタイミングを失い、昨年帰国した。
しかし、この年に始まった新型コロナウイルスによるパンデミックにより、タイ代表の活動は大きく規制され、その間にも代表チームでクラスターが発生するなど、アクセルを踏むタイミングを失い、昨年帰国した。
「J1で長く監督もし、W杯も経験させてもらったけれど、W杯の後、なかなか自分が前に進めなかった時に、まだやっていない挑戦でもあった異国で、新たなチャンスをもらったのはとても有難かった。ただ、コロナの制限は厳しくて、リーグも止まり、代表の活動が停滞してしまったのは本当に残念でした。僕は、日本代表と試合をするのを目標にし、そこでタイ・サッカーの現在地、立ち位置は知りたかったし、選手たちにとって日本代表との対戦は夢だったんじゃないか。あそこで(20年のアジア選手権で)対戦できれば、ひとつの目標は果たせたけれど、日本がね(グループリーグ敗退)……。
ただ、タイ人のコーチたちと仕事ができて、目標はインターナショナルにあるんだと伝えられたとは思う。代表をいきなり強くして、主要大会で勝たせる、といった強化もあるが、そうではなくて、国内リーグで、育成世代からじっくりやらなければダメなんだよ、と示したかった。自分と仕事をしたコーチが、そういう考え方を組んで、地方に自前で小さなスタジアムを作っちゃった、と地域のサッカーの発展に実際に乗り出したと連絡をもらって、嬉しかった。
日本人監督はいい仕事をするようだ、とあやふやな評価で自分は仕事を始めたのかもしれないが、あえて、自分が一番やりやすいチームで乗り込んで成果を急ぐ仕事をしなかったからか、日本人監督への評価も、実際にこんな形で、こういう仕事をする、と具体的に変わったのなら、それも良かった。
タイで活躍する日本人の監督も、日本で十分に実績を築いた優秀な監督ばかりだが、タイ国内では日本人と仕事をするのも普通になってきている。1部リーグにも、手倉森(誠)や、石井(正忠)がいるし、2部も含めるとさらに増える。代表監督としては悔いが残るが、タイサッカーがASEAN(東南アジア諸国連合)をライバルにして、そこでの勝利を目標にするだけではなく、W杯(26年は出場枠が48に拡大)の可能性もあるし、選手一人ひとりの技術もとても高い。日本をはじめ、様々な国でプレーできる。自分たちへの自信みたいなものをもっと意識していけばいい、と伝えたつもりなので、インターナショナルな舞台を目指す国であって欲しいね。
もし現場復帰を切実に願っていてもかなわないケースはあるだろうし、あまり思っていなくてもチャンスは巡ってくるのかもしれない。岡田は、指導者ライセンスを返上したけれど、あれは、今治のオーナーとしてチームを育てる覚悟の証だから。
まだやっていない挑戦? でも、一度やったからといってもう一度やっても悪くないでしょう……これは自分の思いだけではどうにもならない。とにかく、カタールを楽しみにしていいますよ」
取材・文●増島みどり(スポーツライター)
ただ、タイ人のコーチたちと仕事ができて、目標はインターナショナルにあるんだと伝えられたとは思う。代表をいきなり強くして、主要大会で勝たせる、といった強化もあるが、そうではなくて、国内リーグで、育成世代からじっくりやらなければダメなんだよ、と示したかった。自分と仕事をしたコーチが、そういう考え方を組んで、地方に自前で小さなスタジアムを作っちゃった、と地域のサッカーの発展に実際に乗り出したと連絡をもらって、嬉しかった。
日本人監督はいい仕事をするようだ、とあやふやな評価で自分は仕事を始めたのかもしれないが、あえて、自分が一番やりやすいチームで乗り込んで成果を急ぐ仕事をしなかったからか、日本人監督への評価も、実際にこんな形で、こういう仕事をする、と具体的に変わったのなら、それも良かった。
タイで活躍する日本人の監督も、日本で十分に実績を築いた優秀な監督ばかりだが、タイ国内では日本人と仕事をするのも普通になってきている。1部リーグにも、手倉森(誠)や、石井(正忠)がいるし、2部も含めるとさらに増える。代表監督としては悔いが残るが、タイサッカーがASEAN(東南アジア諸国連合)をライバルにして、そこでの勝利を目標にするだけではなく、W杯(26年は出場枠が48に拡大)の可能性もあるし、選手一人ひとりの技術もとても高い。日本をはじめ、様々な国でプレーできる。自分たちへの自信みたいなものをもっと意識していけばいい、と伝えたつもりなので、インターナショナルな舞台を目指す国であって欲しいね。
もし現場復帰を切実に願っていてもかなわないケースはあるだろうし、あまり思っていなくてもチャンスは巡ってくるのかもしれない。岡田は、指導者ライセンスを返上したけれど、あれは、今治のオーナーとしてチームを育てる覚悟の証だから。
まだやっていない挑戦? でも、一度やったからといってもう一度やっても悪くないでしょう……これは自分の思いだけではどうにもならない。とにかく、カタールを楽しみにしていいますよ」
取材・文●増島みどり(スポーツライター)