【名将の証言】なぜ最強・清水東に勝てたのか。帝京ブランドを築いた古沼監督の帝王学

カテゴリ:高校・ユース・その他

白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

2022年01月01日

「あの清水東との決勝で選手たちに話したのは…」

第62回の選手権決勝では帝京が清水東を1‐0で下す。前田治(写真左)と長谷川健太(右)がマッチアップするシーンも。写真:サッカーダイジェスト

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──もちろん、走る練習も課していたわけですよね?

「例えば菅平での夏合宿では、宿舎から練習グラウンドまでの2キロを走らせました。朝練、午前練、午後練習などで往復するわけですから、1日だいたい16キロ。当然、正規のトレーニングもこなすわけなので、やる側は相当きつい。外部から見たら異常だったかもしれませんね。ただ、私はサッカー素人ですから正直程度が分かりませんでした。勝つにはこれぐらいの練習を課さないとと、そんなスタンスでやっていった結果、優勝という結果が一度のみならず、2度、3度とついてきた感じです。

サッカーは運動なんです。センスだけで勝てるはずがない。やっぱり動かないと、足を使わないと。これは、卓球、バスケットボール、それに野球などにも当てはまります」

──サッカーの場合、ボールに食らいつく動作がなければ試合に勝てません。上手さと泥臭さ、これらが合わさって初めてチームは出来上がるということでしょうか?

「戦う姿勢ですよね。例えば、守備の局面ではボールを奪うという圧を相手にかけるのが大事。いざ競り合いになったらグッとボールを刈り取る球際の強さも必要です。それらを身に付けるうえで結果的に役立ったのが、3対3や4対4の練習でした。選手たちは、狭いエリアの中で常に1対1になるような状況を強いられるわけですから、自然と戦う姿勢を養うことができました。

狭いと言えば、帝京の練習グラウンドはシュート練習にも適していました。狭いからシュートを外しても、塀なんかに当たってボールが戻ってくる。反復練習にはもってこいの環境で、帝京の強さの秘訣は〝合理的なグラウンド“にあったのかもしれません」
 
──帝京の球際の強さが光ったのが、三羽烏(長谷川健太、大榎克己、堀池巧)擁する最強・清水東(静岡)との一戦。前田治選手の決勝弾で制した第62回の選手権決勝(1984年1月8日)でした。

「当時は清水東に限らず、静岡の高校には技量で敵わない。実際、その大会の準々決勝で清水東は浦和市立に9‐0と圧勝している。向こうの土俵で戦ったら勝てないわけですから、とにかく球際の勝負に持ち込もうと選手たちに話しました。試合内容を振り返れば若干ながら押し込まれましたが、守りは崩されなかった。ディフェンダーの岩井(厚裕)がフィジカルを利して1年生ストライカーの武田(修宏)を止めてくれたのもあって、1‐0で勝てた。

日頃から身体も心も鍛えていた成果が出た試合でしたね。サッカーに判定勝ちはないですから、ボールを意図的に持つ必要はないですし、上手く見せる義務もない。1点取って、ゼロに抑えれば勝ちなんです。あの試合には私のサッカー哲学が凝縮されていましたよ」

──次の大会で帝京は連覇の偉業を達成。思い出深いシーンが、武南(埼玉)との準決勝で室崎公平選手が決めたオーバーヘッドシュートです。

「室崎は、自主練になるとトランポリンをよくやっていましてね。飛び跳ねながらボールを蹴るわけですよ、楽しそうに(笑)。その遊び心を、国立の舞台、しかもオーバーヘッドという形で表現しちゃうんだから、たいしたものでした」
 
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