守備でそれほど走らなかったのは、チーム戦術もあると思う。後半は左CBのパウ・トーレスを固定で抑える、林大地の役割を引き継いで試合に入ったし、延長戦も、あまりひとりで走り回ると、スペインのパス回しがスピードアップし、かえって相手のスイッチを入れてしまう。攻撃のフィニッシュの後、帰陣を早くしてほしい場面はあったが、守備が大きな問題だったとは個人的には見ていない。

　むしろスペイン戦の上田については、守備面より、全く前線の起点になれなかったことが気になった。相手CBとの球際の駆け引きに長けた林のように、上田はプレーできない。スペインのDFは狡猾なので、ハイボールが上がった時、競りに行く振りをして、わざと止まったりする。しかし、上田はそれに気づかず、フリーなのに、ジャンプの最高点でボールに触って、こぼれ球をDFに回収されてしまう。バチンとぶつかってくるDFのほうが、上田にとっては良かった。じゃんけんの相性が悪い。

　そもそも上田は１トップタイプではなく、背負うプレーはうまくないので、あの役割は荷が重い。個人的にはスペイン戦で唯一、采配に疑問を持ったのが、林から上田への交代が早すぎることだった。後半は左CBを固定で見張るように、林の守備負担が減っていたので、もっと林を引っ張っても良かったと思う。
 

　もし、上田をメキシコ戦でフィニッシャーとして起用するなら、鹿島のように２トップ系を考慮してほしいところ。久保や堂安、三好との組み合わせではなく、林や前田大然とのコンビを選択肢に入れたほうがいい。そのほうが、上田のストロングである裏抜けはやりやすくなるはず。正直、今の起用法で上田が批判されるのは酷だ。久保や堂安、２列目の個を優先させるが故に、犠牲になった選手の１人だと思う。

　もちろん、それがチームであり、最大公約数を求める上では、個人のロスが多少出るのも仕方がない。だからこそ最後の３位決定戦では、これまで犠牲となった選手たちの本領が発揮されるチャンスが訪れることを願う。

　二度目のメキシコ戦は一度目ほど簡単にいかず、戦術的な総合力が試されるだろう。それだけに、これまではチームの影に隠れていた自らの個性、溜まったパワーを、ここで吐き出してほしい。おそらく、そのインパクトが無ければ、代表のキャリアはＵ-24で終了するだろう。壮絶なアピールをしてほしい。

文●清水英斗（サッカーライター）