代えの利かない絶対的主力のフィジカル的なマネージメントをどうするかは、ラスト３試合を戦い抜くうえで非常に重要なポイントになる。とりわけ、最年長のキャプテン・吉田が抜けたら、今のチームが回らなくなる。彼自身にはイエローやケガを含めて、細心の注意を払うべきだろう。

　同じ30代の酒井が31日の準々決勝・ニュージーランド戦（カシマ）で出場停止になるが、むしろ彼にとってはいい休養になるかもしれない。できることなら、指揮官には彼が２枚目の警告を受ける前に橋岡大樹（シントトロイデン）に代えてほしかったが、そこだけは１次リーグで采配的中しまくった指揮官の数少ないミスではないか。

　しかしながら、橋岡もフランス戦ではベルギーで磨きをかけた１対１の守備の強さを発揮。十分戦えるところを見せた。ニュージーランドも高さと強さを前面に押し出してくる相手だけに、彼にとってはやりやすいかもしれない。チームのムードメーカー的な役割を担っている橋岡がこの重要局面のスタメン出場で底力を発揮してくれれば、ここまで控えに回ることの多かった面々にも大いに刺激を受ける。そういう意味で、彼も決勝トーナメントのキーマンと位置付けていい存在だ。

　もう１人、ここから本領発揮してほしいのが三笘だろう。メキシコ戦で10分強プレーしてはいるものの、大会前に期待された活躍には程遠い状況だ。森保監督も左サイドに関しては、南ア戦で三好、メキシコ戦で相馬勇紀（名古屋）、フランス戦で旗手怜央（川崎）というように試合ごとに先発を入れ替えていて、それぞれが持ち味を発揮している。

　特に旗手は久保の先制点、酒井の２点目の時に関与し、三好の３点目もアシストするなど、好プレーを連発した。三笘が入り込む余地を見出すのが難しいくらいの状況なのである。
 

　けれども、昨季からのJリーグでの大活躍を指揮官も認めていて、どこかで三笘をスタメンに抜擢したいと考えているはず。本人のコンディションにもよるが、ニュージーランド戦になる可能性も少なからずある。そこで彼が川崎でプレーしているような緩急を織り交ぜたテクニカルなドリブルで局面を打開してくれれば、久保や堂安、上田や林大地（鳥栖）らの得点チャンスは確実に増える。チームにさらなる活力を与える意味で、やはり背番号11の一挙手一投足は注目に値する。本人もこのままでは終われないと強く思っているに違いない。

　ここまでの１次リーグでは、久保がフィニッシャーとして異彩を放ったが、勝負を決める人間が毎試合変わるような状況が理想的。今の日本は誰が出ても勢いをもたらせるような集団になりつつあるが、本当の真価が問われるのはこの先。異常な猛暑、過密日程、コロナの厳しい行動制限、勝利への重圧などさらなる苦難がのしかかるなか、彼らはそれを跳ね除け、53年ぶりのメダルを掴めるのか。全ては森保監督のメンバー起用や交代を含めた采配力、そして選手たち自身のパフォーマンスとメンタリティにかかっている。

　この状態を維持できれば、今回のU-24日本代表は長年、日本サッカー界が超えられなかった高い壁を突破できそうな気がする。大いに期待したいものである。

文●元川悦子（フリーライター）

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