【連載】週刊サッカーダイジェスト・メモリアルアーカイブ その5――1994年6月8日号

カテゴリ:特集

サッカーダイジェスト編集部

2015年06月06日

強気で鳴らすクライフが真っ青な顔で脱帽するしかなかった…。

――タイムアップの笛が鳴った時の雰囲気は、何とも表現のしようがないものだった。
 
 観客が興奮していたのは間違いない。だが、いつもの決勝戦で感じられる「ピリピリする興奮」ではなかった。まるで夢のなかを漂っているような、不思議な浮遊感があった。むろん、バルセロナのファンが泳いでいたのは、とびっきりの悪夢のなかだっただろうが……。
 
 下馬評では、バルセロナが有利という声が圧倒的だった。リーガ・エスパニョーラの劇的な優勝、ミランからふたりのDFが抜けていることを考えれば、これは無理からぬところだろう。実際、キックオフからしばらくの間、このカタルーニャの名門は評判に違わぬ美しいサッカーを展開した。
 
 しかし、それはほんのわずかな時間でしかなかった。
 
「今日の彼らは300パーセントの出来だった。あんなサッカーをやられたら、地球上に勝てるチームは存在しないよ。代表チームを含めてね」
 
 強気で鳴らすヨハン・クライフ監督が真っ青な顔で脱帽したように、この日のミランは、壮絶なまでの強さを見せつけたのだ。
 
バレージの穴はパオロ・マルディーニが埋めた。コスタクルタの穴はフィリッポ・ガッリが埋めた。そしてマルディーニの穴はクリスティアン・パヌッチが埋めた。コンバートされたDFたちは自分の役割を完璧に果たし、その手前ではデサイーがバルサの中盤を圧倒した。
 
 20分すぎから、試合は一方的なミランの攻勢となり、22分、マッサ―ロの一撃がその勢いをさらに加速させた。後半開始から13分が経過した時、彼らのアドバンテージは4点に広がっていた。
 
「苦しいメンバー構成だったが、フィールドに出た選手がよく頑張ってくれた。これぞミラン、という試合をお見せできたと思う」
 
 ファビオ・カペッロ監督は誇らしげに言い放った。今シーズン、彼につきまとっていた「ただ勝つだけの監督」という声は、これで一掃されるだろう。
 
 ミランはこの日、再び世界に夢を与えるチームとなったのだ。――
 本誌では、おなじみセルジオ越後氏もこの試合を現地観戦し、コラムで「凄いものを見てしまった!」と感想を述べている。
 
――ロマーリオはミランのペナルティエリア内に入ることすらできなかったんだ。
 
 バルサの選手は、ボールを持つとあっという間に囲まれて、まるでパスが出せない状態だった。
 
 この4日前、ボクはロンドンでFAカップの決勝も取材したんだけど、何だか違うスポーツを見てるようだったね。――
 
 今回、リオメル・メッシ、ネイマール、ルイス・スアレスの強力3トップを擁するバルサが、12年ぶりに決勝進出を果たしたユーベと対峙する。戦前はバルサ有利という声が多勢を占めているが、果たして下馬評通りにいくのか、あるいは今回紹介したような予想外の展開が再現されるか。
 
 言えるのは、21年前のアテネの時と同じように、決勝の舞台に上がるカルチョのクラブは、不利を予想されているとはいえ、勝っても何ら不思議ではない陣容とクオリティを備えているということである。
 
 ちなみに今回は割愛したが、本誌ではこのCL決勝の他に、始動したばかりのファルカン・ジャパンの初戦(オーストラリア戦)を詳しく報じた他、コカインを使用したディエゴ・マラドーナの入国を日本政府が禁じたことに対する抗議としてアルゼンチン代表がキリンカップ出場をキャンセルした問題など、国内外の様々な話題を取り上げている。
 
※本連載は不定期で更新
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