ひとつの壁を乗り越えて19年シーズンに“覚醒”
佐藤曰く「勝気なスタンスが建英を突き動かすエネルギーになっている」。この点については京増も触れていたが、プロサッカー選手を目指すうえで“負けず嫌い”は重要なファクターになるかもしれない。
「意思が強いからこそ自分を高め続けることができるし、逆境にもめげず、苦難を乗り越える強さも建英は備えていると思います」(京増)
実際、翌19年シーズン、横浜からFC東京に復帰した久保は痛快なパフォーマンスを披露。巧みなドリブルやパスでチャンスを演出すれば、自ら決定機に絡んでゴールを奪う。文字通り“覚醒”した久保はFC東京を大躍進させる原動力となった。その活躍を佐藤と京増はそれぞれこう回顧してくれた。
「マリノスでの経験などプロセスを経てしっかりと力を出せるようになりました。J1のスピードや強度、戦術的な要素とか、そういうものに慣れてきた印象がすごくありました。そこにクオリティやインテリジェンスも乗っかってきた。あの頃の建英は観ていて面白かったです」(佐藤)
「前のシーズンを受けて、守備力、運動量、身体の強さをだいぶ身に付けた感じで相当な努力をしたんだろうなと。攻撃面はあれぐらいやれる能力はありましたから、そこに以前はなかったものが加わってスケールアップしましたよね」(京増)
久保の恐るべき能力のひとつがおそらく修正力だろう。失敗しても、その原因を突き止めてクリアにしていく。振り返れば、FC東京U-18加入当初はフィジカル面などで分が少し悪かったにもかかわらず、1週間も経たないうちにそうした弱点が目立たないよう、プレーに工夫を凝らしていた。18年シーズンの経験を糧に見事な成長を遂げ、19年シーズンにJ1リーグで“ここに久保あり”を強烈にアピールできたのも、その修正力があってこそではないか。
そんな久保は冒頭に触れた壮行セレモニーでこう締めくくっている。
「東京に来てから3年半、4年ぐらいですが、非常に濃い時間だったと思いますし、苦渋ではありますが、自分の決断に誇りを持ちたい。東京での時間を一生忘れません。本当にありがとうございました」
濃い時間──。より具体的に言えば、FC東京で掛け替えのない時間を過ごせたということだろう。そこに少なからず関与した佐藤は、スペインにリターン後の教え子について「思い描いていたキャリアとは少し違うかもしれない」と言いつつ、続けて愛情いっぱいのエールを送る。
「その現状を本人がポジティブに捉えている部分もあるはずで、だからこそ代表戦では躍動感溢れるパフォーマンスを披露できるのでしょう。サッカーを知らない人にも『面白い』と思わせるプレーを表現できるのが、建英の魅力。そのプレーがより勝利に結びつくといいですが、まだまだ成長過程というか、十二分の伸びしろがあります。そういう自覚があるだろうし、無限の可能性を秘めた選手です」<文中敬称略>/了
取材・文●白鳥和洋(本誌編集長)
※サッカーダイジェスト2021年7月22日号から転載。
【五輪代表PHOTO】あなたもどこかに!?ノエスタに駆けつけた日本代表サポーター!
「意思が強いからこそ自分を高め続けることができるし、逆境にもめげず、苦難を乗り越える強さも建英は備えていると思います」(京増)
実際、翌19年シーズン、横浜からFC東京に復帰した久保は痛快なパフォーマンスを披露。巧みなドリブルやパスでチャンスを演出すれば、自ら決定機に絡んでゴールを奪う。文字通り“覚醒”した久保はFC東京を大躍進させる原動力となった。その活躍を佐藤と京増はそれぞれこう回顧してくれた。
「マリノスでの経験などプロセスを経てしっかりと力を出せるようになりました。J1のスピードや強度、戦術的な要素とか、そういうものに慣れてきた印象がすごくありました。そこにクオリティやインテリジェンスも乗っかってきた。あの頃の建英は観ていて面白かったです」(佐藤)
「前のシーズンを受けて、守備力、運動量、身体の強さをだいぶ身に付けた感じで相当な努力をしたんだろうなと。攻撃面はあれぐらいやれる能力はありましたから、そこに以前はなかったものが加わってスケールアップしましたよね」(京増)
久保の恐るべき能力のひとつがおそらく修正力だろう。失敗しても、その原因を突き止めてクリアにしていく。振り返れば、FC東京U-18加入当初はフィジカル面などで分が少し悪かったにもかかわらず、1週間も経たないうちにそうした弱点が目立たないよう、プレーに工夫を凝らしていた。18年シーズンの経験を糧に見事な成長を遂げ、19年シーズンにJ1リーグで“ここに久保あり”を強烈にアピールできたのも、その修正力があってこそではないか。
そんな久保は冒頭に触れた壮行セレモニーでこう締めくくっている。
「東京に来てから3年半、4年ぐらいですが、非常に濃い時間だったと思いますし、苦渋ではありますが、自分の決断に誇りを持ちたい。東京での時間を一生忘れません。本当にありがとうございました」
濃い時間──。より具体的に言えば、FC東京で掛け替えのない時間を過ごせたということだろう。そこに少なからず関与した佐藤は、スペインにリターン後の教え子について「思い描いていたキャリアとは少し違うかもしれない」と言いつつ、続けて愛情いっぱいのエールを送る。
「その現状を本人がポジティブに捉えている部分もあるはずで、だからこそ代表戦では躍動感溢れるパフォーマンスを披露できるのでしょう。サッカーを知らない人にも『面白い』と思わせるプレーを表現できるのが、建英の魅力。そのプレーがより勝利に結びつくといいですが、まだまだ成長過程というか、十二分の伸びしろがあります。そういう自覚があるだろうし、無限の可能性を秘めた選手です」<文中敬称略>/了
取材・文●白鳥和洋(本誌編集長)
※サッカーダイジェスト2021年7月22日号から転載。
【五輪代表PHOTO】あなたもどこかに!?ノエスタに駆けつけた日本代表サポーター!